セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.173 『熱中症で死んでたまるか』

GS業界・セルフシステム

2007-09-10

 9月に入り、業転価格が大きく値を下げたのを受けて、市況もすぐに崩れてくるだろうと覚悟していたのだが、“セルフ銀座”日進市は10日現在、不気味な静寂を保っている。一体どうしたのだろう。私は、この夏の酷暑でどのスタンドも相当体力を消耗したため、グッタリしているのではないかと推測している。(かく言う我がセルフスタンド日進東もバテバテであった)

 「業転高、系列安」という“異常気候”となったこの夏、市況は安定するどころか、むしろ業転安の時期よりもひどい状態となってしまった。安売りの節度というものを長年の経験から体得している独立系スタンドとは違って、元売系列スタンドは、量を吐くことしか頭にないから、体力や体調を考慮に入れることなく、炎天下で無茶苦茶な安売りをした結果“熱中症”になってしまったのではないか。

 熱中症は単なる脱水症状ではない。『暑熱環境下にあって体温を維持するために生じた失調状態』であり、頭痛、失神、嘔吐などの幾つかの症状が重なり合って生じ、放置しておくと多臓器不全を引き起こして死に至る危険性もある。実際、体温(利益)を維持できなくなり、従業員が炎天下で稼いだ油外収益も、夏のボーナスに反映されるどころか、すべて嘔吐してしまう(赤字)状態に陥っているスタンドは、少なくないはずだ。

 もし市況が、このままある程度の水準で維持されるとするならば、日進市のスタンド経営者は、少しは利口になったということになろう。結局、どれほど元売を喜ばせたところで、ひとたびショック症状(経営難)を引き起こせば、元売は救急車ではなく、霊柩車の手配をするだけだ。仮に、点滴(事後調整)を2~3本売ってくれたところで、それが何になろう。少し体調が回復したら、また酷暑での重労働(安売り量販)に駆り出されるだけだ。死んだ方(廃業)がましである。

 熱中症で命を落とす人の多くは、一人暮らしの老人である。ガソリンスタンドで言えば、資金力のない小規模店舗といったところか。「老人」ということから連想するなら、変化に対応する柔軟性のない経営者と言えるかもしれない。元売からは、「今年は○○石油が逝くんじゃないか?」とか「□□石油はまだしぶとく生きてるぜ」と言われているような店である。彼らが、昨今の業界の“異常気象”を生き延びるには、ローコスト・セルフしかない、と私は考えている。

 熱中症になりやすい人たちとして子どもを挙げることもできる。直射日光を浴びながら、のどの渇きにも気づかず夢中で遊んでいる子どもは、販促システムやメール会員などの“おもちゃ”で夢中になっている遊んでいる間に、どんどん人・物・金を消耗させている経営者になぞらえる事ができるかもしれない。本来、遊び過ぎを注意すべき立場の親(元売)は、ほったらかしである。「子どもはローコスト・セルフなんて内向きの考え方などせずに、元気一杯外で遊んでこい!しっかり汗をかいてこい!けんかも大いにやれ!でも、死んだら自己責任だ!」─。

 成人の体温は平均36~37度で、これが人間の生存に適した体温である。人体は、夏でも冬でも常にこの体温を保つように機能している。熱帯地方に住む人も、寒冷地方に住む人も体温は同じ範囲で保たれている。逆に言えば、人間はこの範囲内に体温を保てなければ、どこに住んでいようと健康な生活は送れないということになる。会社も人体と同じだ。仕入れが幾らになろうと、売り値が幾らになろうと、一定の体温、つまり利益を確保しないと会社は生き続けることはできないのだ。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ