セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.175『自動配送』

GS業界・セルフシステム

2007-09-24

 「いらっしゃいませ、こんにちは!満タンですか?」─かつて、どこのガソリンスタンドでも聞かれたこの声掛けも、セルフ時代となった昨今はあまり聞かれなくなった。セルフスタンドでは、気兼ねなく給油できるうえ、最近のガソリン高も手伝って、金額指定給油の客が圧倒的多数を占めている。フルスタンドでもその影響を受けてか、「お幾ら入れましょうか?」と尋ねる店が増えていると聞く。しかし、考えてみれば、そういう尋ね方がフツーなのであって、客の懐具合も顧みずに、「入るだけ入れますね」と声をかける商習慣がヘンと言えば、ヘンだったのだ。

 それに満タン給油は、燃料タンク内にデッドストックを抱えることになり、燃費にもよろしくない。値上げ前の買いだめ給油以外は、極力避けたほうが賢いと言える。まもなく灯油のシーズンを迎えるが、18リットルのポリ容器に半分ぐらいしか注がない年配客がいたりして、訳を聴くと「階段上って運ぶのがしんどいから」─。そうかと思えば、18リットルを越えて超満タンに詰めてゆく客もいる。

 セルフスタンドでは、必要なだけ、買えるだけの量を自由に給油できるようになり、客は“満タン給油”の呪縛から解放されることになった。ところが、当のガソリンスタンドはどうかというと、元売から有無を言わせず“満タン”にされてしまうという状況に置かれている。例の「自動配送システム」というやつだ。燃料タンクの残量がPOSから元売配送センターへ送られ、いちいち注文しなくても、元売が油種と数量を見繕ってタンクローリーを手配し、勝手に“満タン”にしてくれるというもの。まるで、コップの中のビールが半分近くになったらせっせと継ぎ足してくれるスナックのホステスのような気配りである。

 このシステムなら、スタンド側はいちいち在庫量を調べ、予測を立て、注文をする手間が省ける。業務の簡素化になるうえ、うっかりしてガス欠させてしまう恐れもない。一方、元売は配送ダイヤを無駄のないように組み立て、運賃を抑えることができる。どちらにとってもメリットしかないように思える。エクソン・モービルなどは、このシステムの普及を図るため、協力店にインセンティブまで付けてくれるというではないか。何とありがたい配慮なのだろう。

 ところが、このシステムの普及に、系列スタンドからブーイングが起こっているというのだ。なんでも、「仕入れの裁量権が奪われる」ということらしい。でも、系列スタンドがそれを言うのはちょっとおかしい。だって、みなさんは系列に入った時から、仕入れの裁量権など捨てたも同然なのだから…。にもかかわらず、裁量権がどうこうと言っているっていうことは、もしかして他社からこっそり仕入れようとしているということですか?

 「アナタ!私に隠れてよそのオンナと付き合ってるでしょ!」「付き合ってなんかいないよ」「じゃあどうして自動配送がいやなのよ!」「そ、それは、その…」「自動配送にしたらお小遣いもちょっと上げてあげるわよ」「う~ん、でもなぁ…」「でも、何よ!自動配送がいやなら、もうお小遣い上げませんからね!」─。

 一方、自動配送システムに適合しない、タンク容量の小さな小規模店舗はどうすればよいのか。元売から見れば、大した販売量もないのに、配送に手間のかかるこれらのスタンドは、今後ますます冷遇されるかもしれない。しかし、それを「見捨てられた」ととらえるか、「解放された」ととらえるかは、経営者次第。勝手に満タンにしてもらうのと、自分で選んで必要なだけ買うのとどちらが自分の店にとって得策か。我々小規模店の店主は、小さいことをハンディと思わず、武器にして、生き残り策を模索し続けようではないか。

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