セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.177『M&A』

オピニオン

2007-10-08

 神奈川県のEM系代理店・鶴見石油を、福井県の商社・三谷商事が買収したというニュースは、業界内で驚きをもって迎えられた。M&A(Mergers and Acquisitions「合併と取得」の略)という経営手法にずいぶん慣れてきた日本企業だが、ガソリンスタンド業界ではまだまだ珍しい。欧米では、創業者が育て上げた企業を、二代目の経営者が売却してしまうことに、あまり抵抗感はないようで、むしろ高値で売却できれば“やり手の二代目”として賞賛されるという。

 ところが日本人は、創業家が会社を売却すると聞くと、まだまだ“残念なこと”として捉えられ、経営者の健康問題や後継者問題など、何らかの消極的な事情があったのではないかと勘ぐる傾向にある。会社が売れたということは、それなりの価値のある会社だったということで、むしろ誇らしいことではないのか。「会社が売れてよかったね~」と喜んでよいのではないだろうか。

 まあ、それもこれも、売り物になるようなりっぱな会社の持ち主の話であって、だれも歯牙にかけない私のような零細スタンド経営者には「そんなのカンケイねぇー♪」の世界である。とはいえ、一社ではできないことを、数社が協働することによって成し遂げるという手法は、今後真剣に追及する必要があると思う。

 元売や商社は、今後もM&Aを積極的に推し進め、特約店主が心血を注いで築いてきた販売拠点を、いわば“居抜き”で傘下に収めてゆく方法で膨張してゆくだろう。そのような「帝国型」の手法に対して、零細スタンドが数社、数十社と連携し、販売や仕入れのノウハウを共有しながらコスト競争力を高めてゆく「連邦型」の手法で対抗してゆくことはできないものだろうか。

 秋も深まると、業界においても、鍋を囲んでの情報交換が盛んに行なわれることであろう。そんな機会に、ただ単に励ましあったり、慰めあったりするのではなく、具体的な計画や戦術について検討してみてはいかがであろう。「うちの会社買ってくれませんかね~」「おたくのSS売ってくれませんかね~」なんて話し合いでも良い。半分冗談のような話でも、それをきっかけに有益な“同盟関係”が結ばれるかもしれない。

 ちょうど、幕末の激動期に、犬猿の仲だった薩摩藩と長州藩が、倒幕という共通の目的のために手を結んだように、商圏に進出してきた元売“帝国軍”の大型店舗に対抗するために、きのうまでは熾烈な価格競争を繰り広げていたライバル店と協働することによってこれを迎え撃つという大胆な戦術が、今後必要となってくるだろう。いつまでも、コップの中の争いに明け暮れている時代ではない。より強大な敵との戦いに備えなければならない。

 そうは言っても、個性も風土も異なる会社が手を結ぶためには、自我や私怨をある程度抑えて、歩調をあわせなければならないのも確かだ。私は、そのキーワードは「セルフ」だと考えている。洗車ビジネスやカーケア販売など、それぞれの企業風土は尊重しつつも、基本的なフォーマットは統一する必要がある。そうしなければ、合併するにせよ提携するにせよ、効率的な経営はできないのである。言うまでもなく、そのセルフシステムは、元売や商社の介在を排した、業者独自のシステムであるべきだ。

薩長同盟の立役者は、言うまでもなく坂本龍馬だ。彼は、自らが設立した「亀山社中」という貿易会社を用いて、薩摩名義で輸入した銃火器類を、長州へ輸出することにより、この両者を交渉の場へと招じ入れた。私も、零細スタンドの経営者であると同時に、セルフスタンドコーディネーターでもあるのだから、セルフシステムの導入を通じて、“スタンド同盟”のお手伝いができたらと思う。坂本龍馬を気取るなら、私の言うM&Aは「ま(M)だまだ、あ(A)きらめんぜよ!」─。

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