セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.178『赤福餅』

社会・国際

2007-10-15

 万年不況のガソリンスタンド業界にいると、隣の芝生(業界)が青く見えて仕方がないのだが、「あ~、油屋で良かった~」と感じることが、たまにある。それは、「不二家」のケーキや「白い恋人」、そして今回の「赤福餅」などの賞味期限改ざんが報じられる時である。

 わたしたちは、在庫が腐るという心配をしなくて良い。賞味期限が切れた商品を廃棄するというコスト負担を考えなくて良い。つくづく楽ちんな商売だなぁと思うし、ガソリンスタンドの経営感覚で食べ物を販売してもうまくゆくはずがないのである。

 それにしても「赤福餅」の消費期限の再設定(「まき直し」と呼ぶらしい)は、34年も前から行なわれたというからひどい。伊勢市保健所はこの実態をある程度把握していたらしいが、農水省には報告していなかったと言う。理由は、衛生的に問題があるわけではなかったからというものだが、本当だろうか。「赤福」と言えば、伊勢市のみならず三重県の商工業界のボスである。地元保健所に政治的圧力がかかったとしても不思議ではない。

 一度製造した「赤福餅」を冷凍保存し、後日解凍して「まき直し」た背景には、廃棄コストを抑えながら、拡大した販売拠点に商品を切れ目なく供給しなければならない、食品メーカー特有の台所事情があったのだと思う。「できものと食い物屋は大きくなると潰れる」と言った人がいたが、販売規模が大きくなればなるほど、廃棄コストや出荷コストがかさみ、経営を圧迫する危険性を先見したのであろう。

 ガソリンスタンドも、廃棄コストこそないものの、店舗数を増やせば増やすだけコストがかさむのは同じこと。この間までは、ガソリンスタンド業界では、店舗数を増やし、総販売量を大きくすることが会社の発展に繋がるとされていたが、昨今の厳しい環境では、むしろ、図体の大きさが対応の速度を鈍らせているようである。大手、それも「赤福」のような老舗が、倒産や買収の憂き目に遭っているのは事実である。「できものと油屋は大きくなると潰れる」というわけか。

 「赤福」は「赤福餅」の原材料を、「小豆、もち米、砂糖」と表示していたが、これも重量順に「砂糖、小豆、もち米」と表示するよう指導を受けた。どうりで甘っちいと思った。せこさもここに極まれりの感があるが、こうした不正直で見栄っ張りの表示技術は、創業三百年の老舗より、ガソリンスタンド業界の方が、一枚も二枚も上手である。会員価格やプリカ価格など、二重三重価格はお手のもの。リライトカードで釣銭をごまかしたり、外税価格で安値に見せかけたりと、亀田大毅顔負けの反則(販促?)業を次々に繰り出している。こういうことを続けていると、ガソリンスタンドの表示価格に対する客の不信は増殖するばかりだ。

 「赤福」も、創業時のまま、伊勢街道で慎ましくあんころ餅を作っていればよかったものを、欲をかいて、名古屋駅や大阪駅でも売ろうとするから、今回のような事態を招いたのだ。ガソリンスタンド業界においても、今後は、元売や商社からどれほどそそのかされようとも、拡大志向と決別し、小さく、手堅く儲けるよう体質改善を進めるべきだと思う。昨今、大手のガソリンスタンドチェーンが倒産や買収の憂き目に遭っている実情を見ると、その思いはますます強まる。

 「赤福」の名の由来は「赤心慶福」─まごころを尽くし、人に幸を呼ぶという意味だそうな。34年もの間製造日を改ざんしながら「謹製」という仰々しい刻印を記し、そのくせ、客に対しては「お早目にお召し上がりください」との強圧的な但し書き─。老舗の驕りが招いた不祥事と言わねばなるまい。ところで、件の「赤福餅」だが、それほどの銘菓かと問われるなら、私の個人的な評価は「NO」である。私は、あんこも餅も全然OKな人間だが、以前から「赤福餅」の、あの甘ったるく、べちょべちょとした食感が好きではなかった。だから、販売中止になっても全然残念ではない。東海地方には、もっとうまい菓子がたくさんあるのだ。

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