セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.225『敬老の日に思う』

オピニオン

2008-09-15

 総務省は今月14日、敬老の日に合わせて65歳以上の高齢者人口の推計値をまとめた。その結果、「後期高齢者」である75歳以上の人口は、前年比53万人増の1,321万人。総人口の10.3%を占め、現行の統計方式が始まって以来初めて1割を超えた。

 確実に進む高齢化社会─ガソリンスタンド業界にとってもこれは深刻な問題である。どの自治体も、様々な優遇制度を設けて高齢者の運転免許証返納を勧めており、ただでさえ減衰傾向にある市場に、一層拍車がかかることが予想されるからだ。

 判断や動作の速度が鈍る─これは年を取ればだれもが経験することである。人はある日ある時、それまでなら何の苦もなく成し得た事柄をしくじったり、自分でもなぜそんな事をと思えるようなミスを犯したりして愕然とし、自らの老いを実感する。自動車の運転の場合、それが大事故につながることもある。ブレーキとアクセルを踏み間違えたり、信号を見落としたりして惨事となった事故が、高齢者数と比例して増えている。

 いまのところ、高齢者の免許返納は自主性に任せられている。あいにく公共交通機関を用いて自由に移動ができる地域は限られており、まだまだ自動車への依存度は高い。ここ日進市においても、多くの高齢者ドライバーが、主に軽自動車に乗って移動している。当然、それらの人々はわたしたちのお客様のかなりの部分を占めている。

 先日、たまたまフィールドで掃除をしていた時、高齢の男性が軽トラックに乗って来店された。券売機でプリカを買い、レギュラーを満タンにしたあと、やおら「ここの機械は操作が簡単だで助かるわ~」と声をかけられた。「よその店の機械は難しすぎてよう分からんわ。この間なんぞ、店員さんに叱られてまってよ~」─。

 無理もない。多くのセルフスタンドのPOSは、高齢者にとって操作が煩雑すぎる。やれ精算方法を選べだの、油種や数量を選べだの、釣り銭はレシートを持ってあっちへ行けだのと指示され戸惑ってしまうのだ。そのため、絶えず操作の説明をするためのスタッフをフィールドに待機させておかねばならず、余分なコストがかかってしまう。

 高齢者が人手を借りずに簡単に給油するような仕組みを作ることは、セルフスタンドにとって必須の課題と言える。中には、そういう時代だからこそアテンダーを置いて「おじいちゃん大丈夫ですか?」「おばあちゃん、お教えしましょうか?」などと、真心こもった介助をするサービス・スタッフを置くべきだという意見もあるかもしれないが、先に書いたようにそのようなサービスを充実させようとすれば人件費がかかる。その人件費を補うために。結局油外収益を稼がざるを得ない。そうなれば、ターゲットになるのはやはり高齢者ドライバーだ。本当に必要なものならともかく、ほとんど効き目のないケミカル商品を売りつけられるとなれば、「エスエス詐欺」などと呼ばれかねない。

 また、高齢者は例外なく敬意を払われることを望んでいる。セルフスタンドのアテンダーにその認識があるか。来店するたびに操作の仕方を尋ねていたら、何回目かで「アンタじゃセルフは無理だからよそで給油してくれ」と孫ほどの年の従業員に冷たくあしらわれたと嘆いていた人もいる。『だれの世話にもならずに給油をする』─高齢ドライバーの多くはそう望んでいるのではないか。ゆえにセルフスタンドはお年寄りでも簡単に安全に(もちろん安く)給油できるシステムであるべきだと思う。世界に例を見ない高齢者社会の国にあって、お年寄りにとって本当に親切なガソリンスタンドとはどのようなものなのかを考えることはとても大切なことである。

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