セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.239『人員削減』

政治・経済

2008-12-22

 いま、日本中の大企業が、あちらで何百人、こちらで何千人といった具合に、いわゆる派遣社員の首をバッサバッサと切っている。職を失うだけでなく、会社の寮からも追い出されて寝泊りする場所さえないという人々のことが、毎日のように新聞やテレビで報じられている。気の毒の一言に尽きる。あまりの仕打ちに、会社に抗議しようと組合を結成し、工場の前でビラ配りをする派遣社員たちもいるが、そのビラを受け取る正社員たちの表情は複雑だ。だれひとり、「オレたちの給料を減らしてでも彼らを雇ってやってくれ」なんて言う者はいない。ボーナスを減らされようと、サービス残業を強いられようと、いまはただ、正規雇用のありがたみをかみ締めつつ黙々と働くのみだ。

 しかし考えてみれば、正社員の方が派遣社員よりもコストがかかっているのだから、本来は正社員を減らして、派遣社員の比重を大きくした方が会社にとっては良いのだろうが、何せ、世界経済の悪化があまりに急だったため、とりあえずすぐに手を着けることのできるコスト削減策を実施しようということで、十把ひとからげの派遣切りの嵐になってしまった感じだ。いずれにせよこれは当座の処置であって、各企業とも、次の段階として正社員の削減に着手せざるを得ないだろうというのが大方の見方である。

 そもそも、派遣社員やパート・アルバイト社員と、正社員の違いは何かと問われれば、雇用形態の違いというだけのことで、それ以上でもそれ以下でもない。職場によっては、仕事のデキる派遣社員が切られてしまったために、能率や成績がガタ落ちしてしまった、というところもあるのではなかろうか。結局、どうしても人員を削減しなければならないというならば、正規・非正規の違いではなく、能力の優劣によって選別されるべきだろう。

 今回の大量解雇は、おもに製造業において生じているが、サービス業などでは相変わらず人手不足が続いている。今回の大量の人材移動を好機と捉えている企業もあるようだ。例えば、「白木屋」「魚民」などの居酒屋チェーンを展開する「モンテローザ」という会社は、解雇された派遣社員などを対象に、500人を正社員として採用すると発表した。同社では、今後毎年100店舗程度の出店を予定しているため人材を確保したいとしている。

 ガソリンスタンド業界も、これまでずっと慢性的な人材不足に苦しんできたが、近年はセルフ化の進捗と共に、少ない人員で、それもパート・アルバイトを主力とするローコスト・オペレーションへのシフトが相当進んできたようだ。私から見れば、まだまだ人手がかかっているセルフスタンドが多いとはいえ、この10年間で、他の店舗サービス業には見られない劇的な業態変化を遂げてきたことは確かである。いささか皮肉っぽく申すならば、世間が戦後最長の好景気だなどと言っているあいだも、われわれの業界はずっと不景気をかこっていたため、他の業界に先んじて人員削減を進めざるを得なかったというわけだ。

今回の不況の直撃を受けているのは自動車業界だが、日産やマツダなど自動車業界数社が、来年の賀詞交歓会を行なわないという。まあ、これだけひどい状況のうえ、先行きに光明も見い出せないとなれば、「明けましておめでとうございます」などととても言う気分になれないのだろう。しかし、そんなことではますます暗い気分になってしまう。ここはひとつ、不況に慣れっこになっている私たちの業界を見倣ってはどうだろうか。千軒を越える同業者がバタバタと倒れてゆく状況が、干支をひとまわりするぐらい続いているにもかかわらず、毎年賀詞交歓会を開催している。この能天気こそが、不況に耐える力となるのではあるまいか!?

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