セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.245『スタッフゥ~』

GS業界・セルフシステム

2009-02-16

 息子が高校生だった頃の話だが、近所のマクドナルドでアルバイトをしていた。仕事を覚えるのも比較的早く、店長をはじめスタッフの人たちもいい人たちで、傍から見ていても結構楽しそうに働いていると思っていたのだが、ある日ポンとやめてしまった。“なぜ?”と訊くと、自分よりも明らかに仕事ができない大学生のアルバイトの方が時給も職位も上なので、納得がいかなかったとのことだった。“世の中そんなもんだよ”と諭したが─。

 また、つい最近の話だが、ごくたまに行くダイニングバーの女性バーテンダーが、それまで昼間の仕事として勤めていた派遣先を解雇されたという。仕方がないなと感じたが、それを聞いた職場のスタッフが口々に、あなたが辞めちゃったら仕事がまわらなくなっちゃう、支店長に掛け合ってあげるから辞めないで、と泣きつかれたそうだ。彼女は“そう言っていただけるだけで光栄です”と断って、いまはバーテンダー一筋でがんばっている。

 年齢や学歴、正規・非正規の違いなどで職位や給与を定めるというシステムは、まだまだ日本の企業の中では主流である。もちろん、年齢と共に仕事の知識や技術を向上させていったり、学歴相応の能力や資格を習得しているなら、それで良い。だが現実はそうでないことの方が多い。

 あるガソリンスタンドのマネージャーは、社内でトップの油外販売成績を誇る店を任されていた。元売のコンテストでもたびたび表彰され、上級管理職への昇進も間近と目されていたのだが、他店のマネージャーたちはだれも彼の実力だとは思っていなかった。その店には、A子ちゃんというたいそう接客の上手なスタッフがおり、その店の業績はひとえに彼女のおかげだと言うのだ。果たしてA子ちゃんが他の店に移動した途端、その店の成績はガタガタに落ち、マネージャーはストレスで円形脱毛症になってしまったとか。

 ガソリンスタンドの現場では、こうした事例は珍しいことでも何でもない。優秀なスタッフとは、性別や年齢や経歴などで推し量られるようなものではない。あくまで実績、つまり数字をあげることなのだ。それも、過去の数字ではなく、いまの数字の話である。しかも、いまやセルフの時代だ。掛売りが主体だったころの成功体験は、ほとんど役に立たなくなっている。

 では、古参スタッフはもはや不要なのかと言えば、決してそんなことはない。ガソリンスタンドという施設に習熟し、様々な経験を重ねてきたそうした人たちは、ローコストセルフ店のオペレーターとして適任である。

 「セルフスタンドみたいな職場、俺にとっては役不足」とおっしゃるベテラン社員も居るやに聞く。確かに、コントロール室に座っているだけのスタッフなんて、いくらマネージャーの肩書きが付いていたとしても、閑職にまわされたような気がするのだろう。しかし、前回ご紹介した名古屋市でのストーブ火災では、無知・無免許・無責任のアルバイトスタッフが、客が灯油と間違えてガソリンをポリ容器に給油するのを許可したことが原因であった。適任者を配置しておれば防ぎ得た事故だったと思う。あの事故は、セルフスタンドだから起こったのではなく、不適切な人員配置によって起こったのだということを、重ねて強調しておきたい。

 製造業の現場では、派遣社員やパート・アルバイト社員がひとまとめに切られているが、サービス業においてこれと同じことをやった時、サービスのクオリティが低下することが懸念される。人手不足に悩まされてきたガソリンスタンド業界だが、これだけ景気が悪くなれば、ガソリンが1㍑15円ぐらいもうからない限り、さらなる人件費削減は避けて通れないだろう。いまこそ、スタッフ各人の資質をよく見きわめ、適切な配置と公平や処遇を行ない、これから先のコスト競争時代に生き残れる組織を作ることが急務である。そのためにもセルフ化を促進させることは言うまでもない。

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