セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.250『北風と太陽』

オピニオン

2009-03-23

 先日テレビのニュースを観ていたら、生産管理を専門とする山田というコンサルタントが、不況にあえぐ工場の再建に取り組む様子を特集していた。工場内の機械の配置を換えたり、作業手順の見直しをするなどして無駄をなくし生産性を向上させるために、山田氏が工場をくまなく見てまわり従業員たちを指導してゆくのだ。

 カメラは山田氏の精力的な仕事振りを追うと共に、次々と「カイゼン」を指示される従業員たちの戸惑う姿を捉えていた。ガソリンスタンドをセルフ化する際にもしばしば生じることだが、これまでのやり方を大幅に変更させられることに現場従業員は概して消極的である。新しいシステムを導入することへの不安、これまでのやり方を正されることへの不満がそうさせるのだと思う。

 山田氏の的確な指導に感銘を受けながらも、私は二つ気がかりな点があった。一つは、山田氏が従業員たちに指示する際の言い方だ。「これ、なんでこんなところに置いとるんだ? はよ(早く)かたづけんか!」といったきつい調子で従業員を叱りつける。しかし、従業員からすれば、なぜ自分たちが叱られなくちゃいけないのかと思うだろう。そして、もう一つ気になったのは、山田氏がその会社の経営幹部たちとにこやかに応接室で談笑している場面だ。山田氏が雷を落とすべきなのはそれら経営者や管理職ではないだろうか。

 もちろん、断片的な場面を繋ぎ合わせた短いニュース番組を観ただけで、山田氏の仕事を批判するのは間違っている。従業員とは親子ほどの親密な関係を築いているのかもしれないし、カメラのまわっていない所で経営者たちを叱責しているかもしれない。それにしても、もう少し現場の人たちの自尊心を配慮してあげても良いのになあと感じた次第だ。

 ガソリンスタンド業界でも、コンサルタントを招いての教育・訓練が様々な形で行なわれている。対象となるのは主にスタンドのマネージャーたちだ。私が幾人かのコンサルタントのプログラムに参観して感じたことは、やはり、教える相手に対する気遣いに欠けているという点だ。先入観や固定概念を払拭させるためには、生やさしいやり方ではダメだということはわかる。しかし、ハナから“君たちは間違っている”という調子で見下された物言いをされたら、それが100㌫正しいことであったとしても、受け入れ難く感じてしまうのではないだろうか。

 仮に、頑なに従来からのやり方を変えようとせず、それが不利益をもたらしている従業員がいるなら、彼を叱責するのはその会社の経営者の仕事だ。「コンサルタントの先生の言うことは私の言うことだと思って聞きなさい」と─。

 私はコンサルタントではないが、セルフシステムを導入した後、その運用方法を説明したり指導したりする必要に迫られることがある。スタッフの中には、不安や不満をあらわにする人もいるが、その際心がけているのは、決して虎(社長)の威を借る狐のように振る舞うことのないようにということだ。それは、私が接してきたコンサルタントの先生方を反面教師として習得したことでもある。

 問題点を指摘したり、誤りを正す際には、なぜそうした方が良いのかを理解してもらえるように、できるだけ具体的かつ丁寧に説明するように努めている。まちがっても、「そんなこともわからないのか」という態度を取らないように気をつけているつもりだ。北風を吹き付ければ吹き付けるほど、人はコートをしっかりと押さえつけ、決して脱ごうとはしない。少々時間をかけても、相手に対する敬意を忘れず、優しい励ましやほめ言葉によって自発的な行動を促すほうが勝っていると私は信じている。

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