セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.261『江口洋介、転倒す』

GS業界・セルフシステム

2009-06-15

 今月10日午後7時半ごろ、俳優・江口洋介さん(41)が、東京都・渋谷区のガソリンスタンドで、愛車の大型バイク・カワサキ Z1-R(排気量1100CC、重量246キロ)の給油を終え車道に出ようとした矢先、右方向からやってきた自転車に気づき急ブレーキをかけ転倒した。「ガチャン」という大きな音で気付いたスタンドの店員らが江口さんを救助し、119番通報したが、鎖骨と肋骨を折る全治2ヶ月の大けがを負った。

 事故現場は、三つまたの交差点に小道が入り組む複雑な構造の事故多発地点だったそうだ。江口さんが給油したガソリンスタンドは、「シェル」マークでフルサービス店だったのだが、送り出し誘導は適切になされたのだろうか。セルフスタンドでは、基本的に前面道路へ出てのスタッフ誘導はなされない。フルサービス店でも、最近は行なわないところが増えているという。

 かつてあるコンサルタントは、客への送り出しを済ませたあとすぐに店内に戻らず、その車が十数メートル離れるまで、制帽のつばを手に持ち、30度の角度を保ったまま見送るようにと指導していた。客はバックミラーでその姿を確認し“感動”するというのだ。だが、セルフの時代が到来すると、そんなあざとい演出なんかしなくても、客は安さや手軽さに十分「感動して」再来店してくれることが証明されてしまった。

 さらに、送り出しは危険が伴なうサービスである。以前、長野県のスタンドで、送り出しをしていたアルバイトの女子高生が死亡する事故もあった。また、下手な送り出しをして、客が通行人に怪我をさせてしまった場合、誘導したスタッフが過失責任を問われるケースもあるのだという。

 大した演出効果もないうえに、危険や責任が伴なう「送り出し」というサービスが廃れていったのは、当然のことと言える。その一方で、スタンド側としては、客の出口付近に看板やのぼりなどを設置しないようにして、できる限りドライバーの視認性の確保に努めるべきだ。また、近年、iPodの普及によって、自転車に乗っている人(特に若者)の多くは、自動車の音に反応しなくなってきている。これはとても危険なことであり、スタンドの乗入れ口付近には、そうした通行人の視覚に訴える警告装置が必要かもしれない。

 江口さんは自転車を守ろうととっさにブレーキを踏んだもようで、現場検証に立ち会った捜査関係者は「大型バイクに乗りながらよく衝突を避けた。高い運転技術だ」と賞賛。同署の白バイ隊員も「白バイには自ら転倒する「自倒」という訓練があるが、恐怖で体がこわばり、オートバイの下敷きになることもある。江口さんはうまく受け身を取った。下敷きなら、脚の複雑骨折を負っていたはず」とコメントしている。私の店にも、中・大型のバイクに乗って来店する客が結構いるが、給油位置に停車し降りようとしてバランスを崩して派手にこける人をたまに見かける。バイクにまたがったまま給油をする人もいるが、危ないのでやめてくださいと注意している。スタンドを立て、ゆっくり給油していただきたい。

 江口さんのような有名人は別としても、バイクの客というのは、総じてフルサービスのスタンドでは敬遠されてきた。ガソリンが入る量は少ないのに、ノズルを突っ込んだままにしておくこともできず、こぼさずにチョロチョロと給油しなければならず手間がかかる。洗車やオープンボンネットを勧めることもできず、旨みもない。“ちぇっ、バイクか”という感じになる。バイク客も、その辺の空気を察して、セルフを利用する人が多いのではないだろうか。バイクショップ併設のセルフスタンドなんて、結構いけるような感じする。

 いずれにせよ、ドライバーであれライダーであれ、セルフスタンドでの事故はお客の自己責任である。私の長年の観察によれば、フルスタンドでスタッフにより誘導されて出てゆく客より、セルフスタンドから勝手に出てゆく客の方が、運転が慎重なように見える。当初は、セルフなんかにしたら、事故が多発するなどと不安をあおる向きもあったが、実際は、お客自身の自己責任に対する意識が、安全性をむしろ高めているように思う。

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