セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.283『JAL』

政治・経済

2009-11-16

 日本航空が13日に発表した中間決算は過去最悪の1300億円の赤字となり、自己資本が食いつぶされ、がけっぷちに追い込まれている状況が浮き彫りとなった。前原国交大臣直属の専門家チームによる資産査定によれば、すでにJALは債務超過に陥っており、事実上破綻状態であるとの判断も出されている。中村あゆみの代表曲をもじって「ウゥ~翼の折れたエン“JAL”♪」と歌いたくなるような有様だ。

 2001年の同時多発テロに始まり、SARSや新型インフルエンザなどの疫病禍、原油価格暴騰による燃料費の増大、そして昨年の世界同時不況─JALのみならず、世界中の航空会社が苦境にあえいでいる。しかし、例えば全日空は、相対的に赤字幅は少なく、自己資本比率は8.2㌫のJALに対し、ANAのそれは24.1㌫と大きく差をつけている。関係者は、「ANAは早期のリストラ着手で経営体質を強化できた」と見ている。

 JALのパイロットの平均年収は約1,964万円、キャビンアテンダントは約676万円で、どちらも業界トップクラスの金額なのだそうだ。そのうえ、約9,000人のOBに、一人当たり月額約25万円を給付するという企業年金(ANAは10万円未満)も大きな足かせとなっている。結局、JALの場合も、経営危機に陥った企業を再建できるか否かは、人件費や厚生費をどこまで削り込めるかどうかにかかっていると言える。

 航空会社ほどの年収を支払うことはないにせよ、ガソリンスタンド業界も人件費の負担をいかに減らすかが、経営存続のカギを握っていると言って良い。幸い、我々はパイロットも、アテンダントも必要なく“管制官”だけで営業できるシステムを持っている。セルフ化による現金化、省力化に早急に取り組むことは、いまや生き残るための必須条件である。

 経営改善が遅々として進まず、政府からも銀行からも「ドジでノロマでまぬけなカメ」(「スチュワーデス物語」の堀ちえみ) 呼ばわりされているJALだが、同情すべき面もある。地方都市は“国際化”の名のもとに不要不急の飛行場を作ってきたが、「せっかく作ったのだから飛行機を飛ばしてやれ」と政府・与党は赤字路線を半官半民のJALに押し付けてきた。JALの破綻は、日本の航空行政の破綻でもあるのだ。こうなったら、JALは採算の取れない路線はすべて撤退してしまえばよい。慌てて地方の首長たちが空港存続を訴えてきたら、「そんなに国際化を進めたいなら米軍基地を誘致してみては」と“代替案”を提示してみたらどうだろう。

 「もし~オレがヒーローだったら~、元売を近づけやしないのに~♪」─ガソリンスタンドの経営改善を阻害しているのは元売だとこれまでも述べてきた。とりわけ、元売が勧めるセルフ政策は、特約店にコスト削減を促すどころか、新たなコスト負担を生じさせている。元売仕様のセルフスタンドは、採算の取れない地方空港同様、地代が高く、運営費も維持費も大きい。手間のかかる接客サービスや販売プログラムの実施を求めておきながら、一方で人件費や販管費を抑制せよという。「マイレージ」同様、顧客の囲い込みとして推進してきた元売のカード戦略も、ここへ来て特約店に負担を移し替えようとの動きが見受けられる。

 「元売が敷いてきた路線に乗っかって経営してきた結果赤字が膨らんだのに、元売は“自己責任”だとして助けようとしない」─GS経営者の不満は決して的外れとは言えないが、やはり、見通しが甘かったと言わざるを得ない。元売依存の体質を許してきたのは経営者自身である。これまでの歩みを改め、勇気を持って航路変更しないと、業界再編の乱気流に巻き込まれてバラバラになってしまうかもしれない。飛行機もGSも、小回りが効く方が断然良い。元売への不満を抱きながらも、相変わらず元売マークにこだわっていたり、リストラに着手するのをぐずぐずとためらっていると、やがて燃料(資金)が切れて墜落ということになるだろう。

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