セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.287『クレジット』

GS業界・セルフシステム

2009-12-14

 エクソン・モービルは、クレジット会員カード「シナジー」の新規入会時特典である「発券後2ヶ月間ガソリン・軽油 5円引き」を今年いっぱいで終了させる。今後、新たな特典が設定されるかどうかは未定とのことだが、恐らくこれまでより値引き額や値引き期間が拡大することはないだろう。

 貸金業法の改正により、キャッシングやローンなどの金融収益の基盤が崩れたところへ、世界同時不況が勃発し、ショッピング売上げ増による手数料収入の目論見もはずれてしまい、カード・信販会社の経営環境は非常に厳しくなっている。GSの新規会員向けインセンティブも、これまでどおり支払えなくなっているのだろう。

 エクソンに限らず、元売り各社は皆、新規入会者に対して「ガソリン・軽油 1,000円分プレゼント」とか「1ヶ月間ガソリン・軽油10円引き」などの特典を実施しているが、“エクソンがやることはその後業界のスタンダードとなる”という私の理論によれば、これらの特典もいずれ廃止・縮小されてゆくと見ている。

 さらに、クレジット売上げにかかる手数料も、今後は代理・特約店の負担が増してくることを想定しておくべきだろう。元売がかぶってくれるとはとても思えない。『キャンペーンのたびに一生懸命クレジット会員を集めてきたのに、あんまりじゃないか!』と怒る店主がいるかもしれないが、そんなことも予見できなかったのですかと問い返したくなる。

 私に云わせれば、元売りのカードオペレーションにおける代理・特約店の役割は“取次店”以外の何ものでもない。「固定化につながる」とか「油外売上げが上がる」など、代理・特約店のためと称して獲得キャンペーンを展開してきたが、実際は元売りの客を集めさせてきたに過ぎない。日本ではまだまだ現金で給油するという商習慣が根強いせいか、クレジットの比率は精々2~3割といったところだが、クレジット大国アメリカでは、クレジット比率が7割近いスタンドもざらだと言う。その結果、現金不足でガソリンが購入できず、在庫切れを起こすスタンドも少なくないとか。

 運転資金を借りようと銀行に行っても、ちっぽけな個人経営のスタンドに与信枠の拡大などしてくれるはずもない。『うちは現金は少ないが、クレジット客の売上高はこれだけあるんだ』と訴えても、『それはあなたの店の客じゃなくて、元売の客でしょ』と言われてしまうのが関の山。この期に及んで頭の鈍いスタンド経営者もようやく自分が元売に利用されていたことに気づくというわけだ。

 クレジット会員を増やせとハッパをかける一方で、商品代は現金で前払いせよとは、ずいぶんと身勝手な政策だなと思うのだが、それでも、様々なサービスが付与されており、その原資を元売が負担してくれているうちはまだ我慢できたかもしれない。しかし、今後金融不安のしわ寄せを受けるかたちで、会員メリットが薄れ、代理・特約店の負担が増してゆくようならば、スタンド経営者にとっては「苦でちっと」も儲からないカードでしかない。(一応ダジャレ…汗) 

 いまから4年も前の話だが、マレーシアでは石油販売業者協会が、手数料による利益圧迫を理由に、全国のGSでのクレジット給油をボイコットする動きに出たことがあった。あわてた政府は、銀行にカード手数料をリッターあたり0.3㌫引き下げさせることで、GS業者に配慮を示し沈静化させたという。日本のGS業者、とりわけ系列販売業者は、元売のカード戦略に乗っかったまま、陽が「暮れ、じっと」我慢しているより(再びダジャレ…大汗)、PB化も辞さずの気構えで、行動を起こすべきではないだろうか。

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