セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.367『ストレステスト』

社会・国際

2011-07-18

 先月18日に浜岡原発を除く運転休止中の原発に,再稼働の「安全宣言」を出されたのも束の間,それから二週間余り経って,菅首相は一転,全原発の再稼働に耐性検査(ストレステスト)を義務付けた。経済大臣は面子を潰され辞めると言い出し,自治体や経済界にも困惑が広がっている。確かに,原発再稼働をめぐって,ブレーキを踏んだかと思えば,アクセルを踏み,また急ブレーキを踏むという迷走ぶりに,多くの国民はうんざりしているのだろうが,わたしはこれも“あり”ではないかと思っている。

 本当は愛している男性がいるのに,人種や宗教などの違いで周囲から結婚を反対され,やむなく別の男性(大抵,金持ちの息子)と結婚することにしたヒロイン。しかし,結婚式で誓いの言葉を述べるまさにその直前に,ウェディングドレスのまま教会を飛び出し愛する人のもとへ走り去る─よくある映画のワンシーンだが,ヒロインのこの“心変わり”に観客は拍手喝采するではないか。だれもが,彼女の前途を祝福し,置き去りにされた気の毒な新郎に同情することはない。

 もし,不安がないフリをして,経産省の言われるままに原発を再開したあと,どこかの原発で事故が起こったなら,日本はもう立ち直れないかもしれない。そう考えたら,朝令暮改のそしりを受けようとも,前言を撤回してやっぱりテストしようというのは,むしろ英断ではなかったかとさえ思うのだ。まして,再開にノリノリだった玄海原発をめぐる九州電力の「やらせメール」問題や,玄海町長実弟企業への巨額の原発マネーのニュースなどがあとから出てくると,本当に安全だから「安全宣言」したのかと疑うのは当然だ。

 ところで,このたびの原発問題で一躍ウラの「流行語大賞」の有力候補となった「ストレステスト」という語は,国家や企業の経営内容の健全性を調べたり,農作物が環境の変化にどの程度順応できるかを試したり,工業製品の耐久性を計測するなど,様々な分野において用いられている語である。わたしたちの業界も,様々な分野でストレステストを受けている。例えば地下タンク。埋没後40年を超えたタンクは,油漏れを防ぐために内面を繊維強化プラスチックで加工するなどの対策が義務付けられている。改修の猶予期間は2013年2月まで。

 この工事には,数百万から一千万円近い費用がかかるが,その資金を工面する力のない弱小GSは次々に廃業していった。その結果,地方町村では「脱」ならぬ「奪」GS現象が進んでいる。一方,施設はまだまだ健在なのに閉鎖に追い込まれているGSも跡を絶たない。需要の停滞と,厳しい価格競争という「ストレス」にさらされ続け,ギブアップしてしまうのである。とりわけ近年,元売系列GSは仕入れコストにおいて“ブランド”という名のハンディキャップを背負わされており,独立系GSとのコスト競争で厳しい戦いを強いられている。

 こうしてわたしたちは,好むと好まざるとにかかわらず,日々ストレステストを受けているようなものだが,問題は,その過程において個々のGS経営者が,それまでの価値観を変えてでも,環境の変化に対応するだけの勇気を持ち合わせているかどうかだ。「脱元売」,「脱掛売」,「脱油外」…なんでも脱すれば良いわけではないが,いつまでも面子や体裁にとらわれて決断を先延ばしにしていると,やがて機能停止ということになってしまうかもしれない。原発と違い,GSには「再稼働」のチャンスはほとんどないのだ。

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