セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.377『規制緩和,そのあとは…』

政治・経済

2011-10-03

 京都市に本社を置き,低料金タクシー会社としてつとに知られている「エムケイ」は,京都市内を中心に16ヶ所のガソリンスタンドを展開している「エムケイ石油」をグループ傘下に置いている。9月27日付「日経新聞」によれば,エムケイ石油は今後,店舗を増設・大型化し,事業の効率化を高めると同時に,車検,修理,洗車,保険,車の買取りサービスなどを強化し,2011年3月期の90億円だった売上高を,2016年3月期に200億円に高めるとのことだ。また,すでにタクシー事業で進出済みの主要都市においても,営業所に併設するなどのかたちでGSを新設・展開してゆく計画であるという。エムケイ石油は,おもに出光興産のGSチェーンを展開しているが,近年,「ベストバリュー」という独自ブランドを立ち上げ,タクシー同様,低価格戦略に一段とギアシフトしているようだ。

 かつてタクシー業界は,地域ごとに車両台数や料金体系が統一されており,改定するには運輸局による認可を必要としていたが,これに異を唱えた「エムケイ」が,当局を相手取っての裁判を起こし,“運賃の自由化と需給の弾力性”を認められたことが端緒となり,今日の規制緩和の道を開くことになったという話はあまりにも有名だ。以後,お上の庇護のもとで安楽な経営をしていた日本のタクシー会社は,一転,熾烈な価格・サービス競争を繰り広げることとなった。ちなみに,「ウィキペディア」の情報によれば,日本で初乗り運賃が一番安いタクシーは,石川県七尾市の「港観光タクシー」で,250円(!)なのだとか。

 規制緩和・撤廃は,市場競争を促進させ,消費者・利用者に確実に恩恵をもたらしているが,それによる弊害もある。例えば,タクシー業界では規制緩和以降,各社の利益率が大幅に低下し,タクシードライバーの収入が激減,過重長時間労働を余儀なくされており,過労による事故の増加を招いているとの指摘がある。確かに,「安全」を犠牲にしてまで競争をするのは愚かなことであり,新たな規制を設ける口実を役所に与えるだけだ。

 GS業界も,1996年の特石法廃止と1998年のセルフ給油方式の解禁によって,競争が一気に激化した。その結果,GS軒数は最盛期の3分の2までに減ってしまったのだが,それでも私は,この規制緩和はやってよかったと思っている。なぜなら,結果的に元売頼みのGS経営から脱却し,自存自衛のGS経営を促進させることになったからだ。それは,PBスタンドが1万ヶ所を超えるまで増殖したことに如実に表われている。タクシー業界においても,規制緩和後に個人タクシーが劇的に増加したそうだが,自らの知恵と資金でやってゆこうとする業者が増えることが,長期的に見れば,業界を活性化させ,安定化させることに繋がると思う。

 しかし,繰り返し述べるが,競争の挙句に「安全」が疎かになってはならない。いわゆる消防法上の“安全”は言うまでもないことだが,消費者に対する「安全・安心」を損なうようなこともあってはならない。エムケイ石油を例に挙げると,同社が発券しているチャージ式前払いカード,「MKバリューカード」は,店頭価格から 4円引きのうえ,最大3万円チャージで900円分のポイントを加算している。さらに,ポイント2倍キャンペーンの際には,それが1800円となるため,トータルでざっと1㍑あたり10円ぐらい値引きをすることになる。これと似たシステムを導入している量販店は少なくない。前払いによって得た莫大なキャッシュフローはどのようなかたちで担保されているのか。くれぐれも,業界の安全性・信用性を損なうことのないよう,しっかりと管理・運用してもらいたい。もし“事故”が多発するようになれば,再び新たな規制がかけられることになるのだから。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ