セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.379『共同購入』

GS業界・セルフシステム

2011-10-17

 一万円のプリペイドカードを買った客に,もう一枚買うかわりに1円/㍑ まけてくれと頼まれても“勘弁してください”とお断りするだろうが,親族や友だちの分もまとめて三十万円分買うからまけてくれと頼まれたら,考えるかもしれない。1リットル当たりの利益は減るが,まとまった売上を確保することができるのだから,悪い取り引きではない。

 このように,一定の人数分が集まれば割引するという昔からある商慣習を,インターネットのウェブサイトで客を広く募り,共同購入型クーポンを発券するという新しいかたちのサービス業態にしたのが,2008年に米国で誕生した「グルーポン」だ。客をたくさん集めたい店側と,少しでも安い料金で商品やサービスを利用したいという消費者の思惑とを結びつけることで急成長を遂げ,世界40ヶ国以上で事業を展開し, 2010年の売上高は3億5,000万ドル(約300億円)と推定されている。

 しかし,ガソリンスタンドの共同購入型クーポンはほとんどお目にかからない。さもありなん。仮にどれだけ客を集めたとしても,一万円プリカを50㌫OFFにしたら,売れば売るほど大赤字だ。GSではせいぜい,個々の会員向けに「本日ガソリン5円引き」といった程度の携帯クーポンを送るのが精一杯である。

 では,洗車や車検など油外商品の50㌫引きならどうか。確かに一定のボリュームは見込めるものの,廉価なサービスは,結局,品質の低下を招くことになるのではないか。事実,米国のニュースサイト『ビジネス・インサイダー』は,「40%のクーポン購入者が失敗であったと考え,グルーポン経由の利用者でリピート客になる人は少ない。また,競合サービスと比べて,特に優位な面もなく,半分以上の店舗は再利用を考えていない」と報じている。

 無理な割引は一時的な集客には有功でも,いつまでも続けられるわけではない。いや,続けることは大きな危険性を伴っているとさえ言える。GS業界に限って言えば“あすから三日間,5万円プリカを半額で販売します!”なんていうキャンペーンを打つ店があれば,ほぼ間違いなく資金繰りに窮していて,当座必要な現金をかき集めるためにやっていると見たほうがいいだろう。

 しかし,冒頭で述べたように,ある程度のまとまった数量のガソリンを前払いで買ってもらえるのであれば,半額にはできないにせよ,割引することはやぶさかでない。たくさん売れる力がつけば,仕入れにおいても価格交渉力を持つことになる。いわゆるスケールメリットというやつだ。

 かつて系列GSは,“利益はあとから付いてくる”とばかりに,採算など一顧だにせず量販キャンペーンを毎月のように行ない,その販売量を証文にして,元売から“利益”をぶん取ってこれた。それが廃止されたいま,多くの系列店が,PB化の道を模索しているようだが,圧倒的な販売量を持つGSはそうはない。そこでしばしば持ちあがるのが「共同購入」という発想だ。しかし,私に言わせれば,そんなことを言っている人たちは“PB化,みんなでやればコワくない”的な発想の持ち主であり,いまどきどこからも相手にされないだろう。いつまでも“共存共栄”の幻想を抱いていればよろしかろう。あるいは,どこかの石油商社が,グルーポンを通じて,『48時間以内に200人購入希望者集まれば,業転レギュラーガソリン20㌔ ○○万円引きクーポン発券します』なんて共同購入クーポンを企画してくれるのを待つしかない。

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