セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.387『誘導にご用心』

GS業界・セルフシステム

2011-12-12

 今月11日,千葉県野田市のガソリンスタンドで,愛車のフェラーリを洗車し終えた男性が,バックした際,後ろで誘導していた男性店員(23)をはねて逃走したとして,自動車運転過失傷害で警察に逮捕された。容疑者の男性は65歳の医師で,店員をはねたあといったん下車。店員の様子を見て,「わたしは医者だが,見たところ大したことはない」などと言って,店員が止めるのも聞かずに,そのまま立ち去ったという。店員は左足に軽傷を負った。

 今月の4日には中国自動車道で,フェラーリ8台を含む高級車14台の多重衝突事故がおきたかと思えば,9日には大阪府高槻市でフェラーリがカーブを曲がりきれずに民家の壁に激突,運転していた68歳の会社経営者が死亡しており,今月はフェラーリがらみの事件が続いている。実際,冒頭の事件も,車がフェラーリでなくフツーの国産車だったら,全国ネットで報じられるようなことはなかったかもしれない。

 とは言っても,一連の事件はフェラーリ車に問題があるのではなく,運転している人間の資質に問題があったんじゃないかという話で,「フェラーリ・イコール・悪質ドライバー」というステレオタイプのイメージが定着しかねない。とりわけ,GS関係者にとって,件のフェラーリ医師の態度は“おれたちを何だと思ってやがる!”と憤りがこみ上げてくる話だ。しかし,そこを堪えて冷めた目でこの事件を見つめなおすと,やはり誘導という“親切な行為”が持つリスクについて考えざるを得ない。

 最近では“セルフでもホスピタリティが大切”ということで,スタッフが店頭に配置され,出迎えや送り出しを行なうところが増えているらしい。元売各社が開催するサービスコンテストも,近年は「フルサービス」と「セルフサービス」に分けて行なわれるようになったが,どちらも誘導は必須となっている。セルフ化するということは,コスト,とりわけ人件費を削減することによって競争力を確保することなのに,うちの近所の大型セルフでは,5~6人ものスタッフがフィールドで「オーライ,オーライ」とやっている。私に言わせれば,異様な光景だ。

 給油待ちの客で長蛇の列ができているというのなら,交通整理係として最小限のスタッフを配置する必要があるかもしれないが,下手なドライバーにはねられたり,逆にこっちが下手な誘導をして接触事故を引き起こしてしまったりする危険性を可能な限り回避すべきだ。“たかが給油,放っておけばいいじゃないか”というのが私の考えだ。

 もちろん,誘導スタッフが単なるアテンダーではなく,油外商品販売という目的を担ったセールスマンであることは百も承知だ。しかしそれは,お客にも見透かされていること。こちらの“親切な行為”の下ごころを悟られ,相手にうっとうしがられているというのが現実ではないか。“放っておいてあげる親切”というものも世の中にはあるのだ。

 セルフはあくまでも“待ち”の姿勢が基本であり,来店から給油・精算,店から出るまでのほとんどすべてを自己責任で完結させるべきだ。そうでなければ,何のためにセルフにしたのかわからないではないか。私の店にも時々,真っ赤なランボルギーニ・カウンタックが給油に来る。「ブロロロォー」と排気音を響かせながら給油レーンに滑り込んでくると,初老の男性が五千円プリカを買い,ハイオクガソリンを給油して出てゆく。その間90秒ぐらい。特別なことは何もない。「一万円プリカなら1円,二万円プリカなら2円お徳ですよ」なんてお節介な声かけは一切しない。またのご来店をお待ちしております…。

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