セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.388『恋愛ゲーム』

GS業界・セルフシステム

2011-12-19

 先日,ある石油商社の方が来られて,名古屋市内の現在休眠中のガソリンスタンド(セルフ)を運営しないかという話を持ちかけられた。そのGSの所有者でもあった以前の運営者は2年ほど前に倒産,その後競売を経て不動産会社の手に渡ったのだが,賃貸物件として借り手を探しているのだという。ただし,その際の条件として,仲介役のその石油商社と特約店契約を結んでほしいとのことだった。

 確かに,石油販売を生業としているのだから,新たな借り手に自分のところからアブラを引いてもらえなければ面白くなかろう。しかし,特約店になるということは,正式に夫婦になるということだから,原則浮気や不倫はダメ。実際の家庭生活ではそれが望ましいかたちだが,GS業界は,それではやってゆけない。「あなたひとすじ」とか「君といつまでも」なんて歌っているGS経営者は依然少なくないが,その結果,「ボクは幸せだな~」とはいかないのだ。

 一方,“本妻”を持たないPBスタンドであれば,少なくとも4~5社とは付き合っている。毎週金曜日になると,各社から翌日からの一週間の価格見積りが送られてくる。大切なことは,それら取引先に絶えず「やきもち」を妬かせておくことだ。時々,そのうちの一社から“ずいぶんご無沙汰じゃないの。あしたから○円にするから付き合ってよ”とラブコールがかかる。待ってました,愛してるよ─。そうやって,少しでも安いガソリンを仕入れる努力をしなければ,厳しい競争を生き残れない。

 『特約店ってことは,一応マークがあるってことですか』と私。『ええ,あります。全国に数えるほどしかないんですがね…』と自嘲気味に商社の方。『どうしてそんな元売の真似事なんかしようとなさるんですか。コストがかかるだけじゃないですか』『そうなんですが,やはり毎月“計算”できる販売先を確保したいということがありまして』『だったらいっそおたくの子会社か何かに運営させればいいじゃないですか』『いや~そっちの方はコストがかかるということで年々縮小させているんです』─。

 結局“自分だけのもの”にしようと思えば,いろいろと貢がねばならず,採算が取れなくなってしまうというわけ。浮気をさせまいと,特約店契約なんかでがんじがらめにしようとすれば,まとまる話もまとまらない。むしろ“はじめはおともだちから”とか“たまには付き合ってくれるとうれしいな~”といった感じの方が,かわいげがあり,むしろ長いお付き合いとなるかもしれない。あるいは,本心を隠して“別にどっちでもいいわよ”と冷たく突き放す「ツンデレ作戦」が功を奏するかも。もちろん,価格や条件が魅力的でなければ,だれも近づいてこないが。

 何をふざけたことを,と思われるかもしれないが,GS業界では,売る側も買う側も,恋愛ゲームのように駆け引きを楽しむぐらいの気分でいないと,やってられない。ところで,冒頭のGSの話はどうなったかというと,“家庭に縛られたくないので”ご遠慮させてもらった。それに,ウチなんかよりもはるかに“精力絶倫”の会社を幾つか知っていますから,よろしければご紹介しますよ,と…。

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