セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.394『煮え切らない人たち』

GS業界・セルフシステム

2012-02-06

 先月末,私は関西のある地方都市のガソリンスタンドを訪問した。某元売の特約店として半世紀以上に渡る業歴を誇り,現在 6ヶ所のGS(そのうち1ヶ所がセルフ)を展開している。ところが,近年,需要が減退する中で,商圏を一にするPBスタンドの価格攻勢にも押され売上が漸減,危機感を抱くに至った経営者は,PBセルフ化を推し進めるべく,私にアドバイスを求めてきたというわけだ。

 実はこの会社は7年ほど前に,セルフGSへの改造を図った際にも,私に声をかけてくださったのだが,計画を進めるうちに元売からの反対を受け,やむなく元売のセルフシステムを導入するに至ったという経緯があった。しかし,元売との二人三脚による成長戦略に行き詰まりを感じた経営者は,今回,1ヶ所を「とりあえず」PBにして現金客主体の運営を行ない,「行けそうなら」セルフに改造しようということだった。

 確かに老舗特約店にしてみれば,その程度のことでも“一大決心”といえる行動なのかもしれないが,私はそんなのんびりしたことをやっていては間に合わない,少なくとも半分の3店舗は可及的速やかに業転購入,現金スタンド化を進めるべきと提案した。後期高齢者の社長は,「そんないっぺんに変えてしまったら…」と戸惑いを隠せず,「とにかく,まず1ヶ所をPBにしようと思いますので引き続きご指導を…」とのことだった。

 また,四国のあるPBスタンドの経営者からは,セルフ化を考えているのだが掛売り客も抱えながらでもできるのかといった問い合わせのメールをいただいた。セルフはあくまで現金客主体だが,既存の掛売り客も残しながらローコストで運営することは十分可能であり,ぜひ一度,名古屋・日進市に視察においでくださいと返信したのだが,「当方,四国ですので,なかなか行くのは難しい。こちらでイメージを膨らませます」とのことだった。

 さらに,地元愛知県の土建会社が経営するあるGSは,これまで土建会社が儲かっていたころは,赤字経営でもやって行けたのだが,この数年で本業も厳しい状況に置かれるに及んで,セルフ化による合理化を図ろうということになった。レイアウト図面を引き,概算見積りも出してすでに2ヶ月あまりが経つが,社長の長男であるGSマネジャーが,「そんな極端なことをしなくても,接客サービスを一生懸命やれば何とかできるんじゃないか」とかナントカ言ってぐずぐずしている。土建会社の方に務める次男は,「この期に及んでまだそんな甘いことを言っている」と兄を責める。兄弟間の確執も絡んで,一向に話が進まないという状況だ。

 愛知県の別のGS経営者は,自分の店を他人に貸してリタイヤしたいとのことだったので,私が既知の石油販社に話を持ちかけたところ,是非やらせて欲しいとの返事。ところがいざ話が進み出すと,臆病風の風速が高まり,これまた先に進まない。“じゃあ,最初から言うなよな”という話。

 水の入ったナベの中のカエルは,ゆっくり温められると,熱くなってきても気付かずにそのまま煮えてしまうのだという。カエルが本当にそれほど鈍感な生き物なのかどうかは知らないが,GS業界には“煮えガエル”になりそうな人がまだまだ多い。年を追うごとにGS業界の環境は厳しくなっており,その変化は加速しているというのに,相変わらず「とりあえず」「そのうちに」「いまはまだ」と“煮え切らない”態度のままだとやがて…。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ