セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.403『なんちゃって軽油』

GS業界・セルフシステム

2012-04-09

 『愛知県大府市などで軽油を密造し脱税したとして, 名古屋市の石油販売会社「シンクス」社長ほか4名が,地方税法違反の疑いで,愛知県警に逮捕された。逮捕容疑では,2010年7月から昨年3月にかけて,灯油を軽油に混ぜて水増した不正な軽油を1,480万リットル製造販売し,4億8千万円の軽油引取税を脱税したとされる。

 「シンクス」については,業界関係者は「かなり前から社名を変えながら不正軽油を販売しているうわさがあった」と話しており,昨年3月の東日本大震災直後,被災地にも売り込みに行き,宮城県の業界団体から「いかがわしい会社が来ている」と問い合わせもあったという』─4月7日付「中日新聞」

 跡を絶たない密造軽油。灯油で3割薄めれば,1㍑あたり約10円の“脱税利益”が加算される按配だから,強欲な連中にとっては魅力的な“ビジネス”だ。私もいまから7年ほど前に,ある業転屋から仕入れた軽油に灯油の成分が含まれていることが経済産業局の抜き取り検査で判明し,抜き取らせたことがあった。業者を問い詰めると,「いや~,クマケン(クマリン検査)パスするはずなんですがね~おっかしいな~」としれっとしている。

 あとで聞いた話では,その男は業転屋仲間のあいだでは「博士」と呼ばれる人物だという。つまり,ガソリンや軽油を,当局にいかにバレないように薄めることができるかという知識と技術を熟知しているというのだ。こういう輩が跋扈している限り,ノンブランドのガソリンスタンドに対する偏見が拭い去られることはないだろう。10日に1度の品質分析のために,石油協会から年間18万円も徴収されるという差別待遇も改まることはないだろう。まったく苦々しい話である。

 ところで,7年前に不覚にも“なんちゃって軽油”を販売してしまった私の店だが,幸いお客様からエンジントラブルなどの苦情は一件もなかった。というか,実際のところ2~3割程度の比率で灯油を混ぜても,走行に特段支障はないそうだ。灯油は軽油に比べて潤滑性が劣るため,燃料噴射ポンプの磨耗を早める恐れがあるが,一方で,硫黄分などが少ないため,排気ガスはむしろクリーンになる。事実,灯油や重油の潤滑性を向上させてディーゼル燃料として使用できるようにする添加剤が販売されている。

 今回摘発された「シンクス」は,名古屋市内でPBスタンドも運営しており,私の知人のトラック運転手は,そこでよく給油していた。価格が周辺より10円近く安いので,恐らく“なんちゃって軽油”だろうと疑いつつも給油していたという。やはり,エンジントラブルなどは一度もなかったそうだ。

 現行の法制度のもとでは,灯油で公道を走ることは脱税という犯罪行為であり,そんな油を売ることも買うこともしてはいけない。しかし,密造軽油が一向になくならないうえに,灯油に添加されているクマリンを除去する過程で硫酸ピッチという廃棄物が出ることも考えれば,いっそのこと灯油を自動車用燃料として認めてしまったらどうかとも思う。折りしも政府は消費税率を上げようとしている。そもそも民主党政権は,暫定税率を廃止するとまで言っていたのだから,特定の車種や一定の量を定めたり,暖房用燃料の需要が少ない期間などに限定してでも,灯油を自動車用燃料として使用できるようにして,少しでも国民のご機嫌をとってみてはどうだろうか…。

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