セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.404『越前騒動』

GS業界・セルフシステム

2012-04-16

 『福井県でガソリンスタンドを展開する「ミタニ」がガソリンを極端に安売りしている疑いが強まったとして,公正取引委員会は10日,独禁法違反(不当廉売)容疑で,同社やガソリンの仕入れ先である親会社の「三谷商事」など約10ヶ所を立ち入り検査した。周辺の業者より1㍑当たり最大で約10円安く売っていたという。

 ガソリンの不当廉売をめぐる立ち入り検査は初めて。不当廉売では通常,任意で調査を進めるが,今回,公取委は地域経済への影響が大きいと判断し,書類提出などを拒めば罰則もある行政調査に踏み切ったもようだ』─4月10日付「福井新聞オンライン」 

 ガソリン価格検索サイト「gogo.gs」で改めて福井県の直近2週間のガソリン価格ランキングを調べてみたら,上位はPBと出光のマークで占められていた。3年ほど前から始まったという“越前領主”ミタニと,PB野武士集団との合戦によって散々田畑を荒らされてきた地元GS業者が,この間70件にも及ぶ申し立てを行なった結果,奉行所もようやく重い腰を上げたというところか。

 の事件について,親会社の三谷商事は取材に対し,「ミタニへの卸売り価格を不当に引き下げた覚えはない。ミタニが給油所に販売した価格は把握していない」と,白々しいコメントをしているそうだが, 地元業者の怒りの矛先は,ミタニでも,三谷商事でもなく,仕入れ元の出光興産に向けられていることは容易に理解できる。とりわけ,同じ出光マークのGS店主たちは憤懣やるかたない思いであろう。“いくら大手とはいえ,同じマークでワシらの仕入れ値よりも安く売るなんて,ほんなのあかんげ!?”

 検査の結果,採算を無視した安売りの証拠が出てくれば独禁法違反となるが,もし証拠が出てこなかったら─つまり,ミタニの仕入価格が,周辺より10円安く売ってもまだ利益が出る水準だったとしたら,福井県の出光系GSは集団で系列離脱するか,協働して業転玉を購入すべきだ。しかし,浄土真宗の影響が強く,祖先や家族を大切にする気風・気質があり,人とのつきあいを重視するとされる福井県人のGS経営者たちが,よもやそんな暴挙に出ることはないだろう。

 『(県石商)組合は「今回の検査の結果がどうなるかは分からないが,競争が続けば廃業せざるを得ない業者も多数ある。これを機に経営にめどが立つようになればいいが」と期待を寄せている。福井市内の業者は「会社がつぶれれば,結局市民に迷惑が掛かる。適正価格による健全経営がガソリンや灯油の安定供給につながる」と話した』─4月11日付「福井新聞オンライン」

 奉行所が何とかこの騒乱を収めてくれると期待しているようだが,おそらく裏切られるだろう。もはや,出光の“大家族主義”に代表される共存共栄の構図は崩壊している。実際,このあいだお会いしたGS経営者の方は,私が仕入れているハイオクガソリンとほぼ同値のレギュラーガソリン(!)を仕入れていた。私が,あすにも業転ガソリンを仕入れるよう勧めたことは言うまでもない。もちろんセルフ化も。

 GSの過当競争はまだまだ続くだろう。相手の売り値が不当かどうかを追求するのもいいが,その前に,打つべき手をすべて打ってきただろうか。自分の田畑は自分で守るしかないのだ。

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