セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.405『インチキハイオク』

GS業界・セルフシステム

2012-04-23

 前々回,愛知県の石油販売会社の脱税軽油のニュースを取り上げたが,今度は“インチキガソリン”の話─。

 『消費者庁は19日,レギュラーガソリンを「ハイオク」と偽って販売したとして,ガソリンスタンドを運営する「エム・ワイ産業」(茨城県龍ヶ崎市)に対し,景品表示法違反(優良誤認)で再発防止を求める措置命令を出した。同庁によると,エム・ワイ産業は昨年末までの2年間,ガソリンスタンド「竜ヶ崎給油所(PB)」で,レギュラーガソリンをハイオクガソリンと称して計7万4,000㍑販売。同スタンドでの昨年の平均小売価格は,ハイオクが1㍑当たり146円に対し,レギュラーは同131円だった。同社は「悪いことだと認識していたが,利益を出すためにやった」と釈明している』─2012年4月19日付「読売新聞」

 ハイオクとレギュラーの差額は約15円。(愛知県では大体10円) これを7万4,000㍑も販売したので,111万円もの不正な利益をあげていたことになる。まったくもう…こういう輩がいるから“PBスタンドの油は混ぜ物だ”などという中傷がいつまで経ってもなくならないのだ。そもそも,「再発防止を求める措置命令」って何だ? こんな悪質業者は即刻無期限の営業停止処分にすべきではないか。

 2006年には,三重県津市の昭和シェル系のGSで過去10年間に渡り,166㌔ものレギュラーを「ハイオク」として販売していたことが発覚するという事件があった。10年前の改装工事の際に,配管を間違えてつないだことによる誤給油とのことで,昭和シェル石油はプレスリリースで謝罪。その際,「一般的にハイオク仕様車にレギュラーを入れて走行しても支障はありません」とコメントし,それまで「加速の違いを体感してください」とかナントカ言ってハイオク給油を一生懸命勧めていたシェル系GSマンたちの面子を元売自らがぶっ潰してしまったことがある。

 確かに,エンジンの燃料噴射が電子制御となって此の方,ハイオクを入れようが,レギュラーを入れようが,その違いはほとんどわからないと言われている。6年前の津市の一件は,客からの「エンジンの調子がおかしい」という指摘から発覚したそうなのだが,にわかには信じ難い。今回の龍ヶ崎市の件は,どうやって消費者庁の知るところとなったのだろう。PBスタンドに対する10日に1度のサンプル採取は,普通レギュラー単品のはずだから,関係者などからの通報があったの可能性が強い。

 故意にせよ,不作為にせよ,レギュラーを“プレミアム”として販売することは,アメリカ産牛肉を国産和牛として販売することと同じだ。バレなければいいという問題ではない。健康上の問題がないから心配ないという問題でもない。もう胃袋に入って消化されてしまったから仕方がないという問題でもない。無害とはいえ,お客様に値打ちの低いものを売った挙句,それに気付かずにいたという恥辱を被らせた罪は決して小さくない。

 以前,私のスタンドに高級車で来店されたご婦人に給油後呼び出された。「このクルマに間違えてレギュラーを入れちゃったんですけれど大丈夫でしょうか」というので「大丈夫ですよ。でも,ハイオクには洗浄効果があるので,半分ぐらい入れてお乗りになったらいいかもしれません」と勧めると,いままで行っていたGSでは「ハイオクを入れないとクルマが壊れる」と言われていたということで,「丁寧に教えてもらい安心した」と感謝されたことがある。ハイオクとはそうやって売るものなのだと思う。

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