セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.408『危険物取扱資格』

GS業界・セルフシステム

2012-05-21

 愛知県豊橋市の小学3年生の少女が,先ごろ,危険物取扱者・乙種第6類の試験に合格し,すでに取得している乙種第1類から5類までの資格と併せて,乙種全類の史上最年少の合格者となった。乙種全種の資格を有したということは,すべての危険物の取り扱い,立ち合いができるということであり,甲種と同等ということだ。

 甲種受験には面倒な資格要件があるのに対し,乙種は年齢・性別・国籍を問わずだれでも受験することができる。また,乙種危険物のうちのどれかひとつの類の資格を取得していれば,他の類の試験を受験する場合,全35問のうち,25問が免除される。つまり,その類の危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法の10問のみ解答すればよいのだ。へぇ~,知らなかった。

 それにしても,平均合格率38㌫の国家資格免許を,「ポケモン」か「ワンピース」のカードでも集めるかのようにして,一年余りで次々にゲットしていった小学3年生恐るべし,である。少女の父親は,「(娘は)理科が大好きで,化学物質に対する好奇心が旺盛だった。本人が好きなことを伸ばしてあげたい」と新聞の取材に答えているが,この少女の母親の実家が,豊橋市内でガソリンスタンドを営んでいたことも,少なからず影響を与えたのだろう。

 ところが,このGSは今年3月に閉店してしまったそうだ。少女は「店があったら継ぎたかった」と健気なコメントをしているようだが,彼女が大人になるころには,豊橋市内にどれほどのGSが残っていることだろう。というよりも,小学3年で乙種全類を取得するほどの知力を持っているのだから,GS業界のようなちっとも儲からない業界なんかよりも,もっと将来性のある,化学とか環境などの分野で技能を生かしてほしいと思うのは私だけだろうか。石油元売に入社するっていう手もあるかな…。

 一方,セルフGSが増えるにつれ,危険物取扱者(乙4類)の必要性は,ますます大きくなっている。少々接客や販売が上手でも,この資格を持っていないことには始まらない。逆に,ローコスト・セルフシステムであれば,この免状さえ持っていれば,小学3年生でも楽々店番が務まるのだ。

 そもそも,私も含め,GS業界に入ってくる連中はそんなに学校の成績は良くないから,「オツヨン」の免状を獲るのにも相当苦労する。そのむかし,外資系GSチェーンを経営していたころ,合格率の低さに業を煮やし,元売の紹介で,『必ず合格できる!なぜなら私が教えるからだ! 』をキャッチフレーズに掲げる,危険物専門の講師(元GSマネジャー)を招聘した。折りしも,24時間営業のGSを複数展開させるために資格取得者を大量に養成する必要に迫られたため,20人ほどの老若男女を本社会議室に集めた。2日間,集中講座を行なった後,夜行バスで東京の消防試験センター(毎週試験が行われている)へ行き受験させるという強行軍を実施した結果,10人ぐらいが合格したと記憶している。

 合格者の中には,「つらかった。もう二度とこんな経験はしたくないと思ったので必死に憶えた。ホントに嬉しい」と少しやつれた顔で,喜びをかみしめている若者もいた。免許といえば,自動車免許しか持っていないという人は少なくない。縁あってGS業界に入ってきたそのような人に,資格のひとつぐらい獲らせてやって自尊心と責任感を持たせてあげることも,我々業界人の大切な務めではないだろうか。そして,彼らが生涯働けるような安定した業界を築くことも─。

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