セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.411『業界動向調査を読んで』

政治・経済

2012-06-11

 「帝国データバンク」の調査 によると,2011年度のガソリンスタンド経営業者の倒産は56件発生し,前年度(49件)と比べ14.3%増加した。負債総額も,5年連続で100億円を突破している。GSの倒産件数は自動車保有台数が前年同月比減少に転じた2007年度から高水準で推移しており,今後も倒産は続発する可能性が高いとしている。

 また,2011年度の休廃業・解散件数は190件(前年度比7.8%減)で,3年連続で前年度を下回ったものの,依然として倒産件数に比べて約4倍の発生件数が続いている。その要因の一つとして,2010年の法改正により,40年以上前に埋められたタンクの改修が義務付けられたことがあり,補助金を活用してもなお数百万の費用負担がかかるため,今後も事業継続を断念するGS業者は増加するであろうとレポートは結んでいる。

 特に目新しい内容でもないが,こうしたレポートを読むと改めて,“お先真っ暗な業界だなぁ”と痛感する。「自動車保有台数減少に伴い利用者数が減少するなか仕入れ価格上昇分を価格転嫁できず収益性が悪化する業者が増えたため」,倒産や廃業が増えていることなど,改めて指摘されなくても重々承知のうえで過当競争が繰り広げられているのであり,この先もサバイバルゲームは続くであろう。

 そもそも,石油元売がGS業者を淘汰へと追いやっているのだからどうしようもない。中小零細の特約店・代理店から吸い上げた「ブランド料」を,例えば系列店のタンク修繕を支援するために用いたりすれば,昨今の“GS過疎化”を幾らかでも食い止めることができようものだが,そんな慈善事業に金を回す気はまったくない。ガソリンスタンドがなくて困っている地域にポンプスタンドを作ればどれほど喜ばれるかわからないが,潤沢な資金は,幹線道路沿いの大型店舗の建設や,系列チェーン店の買収のためにつぎ込まれている。

 だが,最も憂うべきは,そんな元売との二人三脚によってこの先も未来が拓けるとの希望的観測を抱き続けるGS経営者が,まだまだ沢山いることだ。過去の“蜜月時代”が忘れられないのか,他に拠りどころとするものがないのか,とにかく元売にどれだけ踏んづけられてもくっ付いて行く様は,「下駄の雪」のようだ。そうしたGS経営者が,この先も為す術なく倒産や廃業に追い込まれてゆく可能性は高い。恐らく,そうなっても仕方がないと諦めてしまっているのだろう。

 一方,厳しい状況のもとでも,何とか生き延びようとあがいているGS経営者もいる。彼らも,数年前までは元売と協働し,組合とも協力してゆくことで自社の存続も叶うと信じていたかもしれない。しかし,已むに已まれず購入した業転ガソリンを積んだ無印ローリーがはじめて自分の店に荷降ろしする時は,浮気をしたような罪悪感に襲われたかもしれない。独自のセルフシステムを導入してローコスト経営に踏み出す時,“もし失敗したら”との思いに駆られ,恐怖で眠れなかったかもしれない。それでも彼らが行動に踏み切れたのは,GS業界への愛着と,家族への愛情があったからだと思う。

 今回の「帝国データバンク」のレポートは,GS業界が深刻な状況にあることを改めて示したわけだが,これを読んでもまだなお,生き残りのために何も行動を起こさない経営者は,自分の体裁のことを第一に考え,家族やお客様のために尽力することを怠っているとしか思えない。

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