セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.413『話しかけないでください』

GS業界・セルフシステム

2012-06-25

 スーツを新調しようと,家内と一緒に「三越」へ出かけた。「男のスーツ大祭典」とかで,有名ブランドスーツが3割引から半額になるということで催事場へ行くと,平日の昼間ということもあり,閑散としていた。そこへ,中年の男性(私)が女房(大蔵省)を連れてやってきたということで,店員がすぐに近づいてきて,何やかやと勧めてくる。その売り場を離れて振り切っても,別の売り場へ行くとまた店員がピッタリくっ付いてくる。私は,うんざりしてしまい,何も買わずに帰ってきてしまった。

 家電製品のように性能などを説明してほしい場合は,店員がそばにいてほしいとも思うが,スーツなんて,寸法と予算だけの買い物で,やれ「今年はこれがよく出ている」だの,「この素材は水をはじく」だの,聞いてもいないのに話しかけられるのはマジでウザイ。とはいえ,気の弱い私は,「あっちに行ってくれ」と言うことができない。どこかのデパートで,希望する客に『話しかけないでください』というカードを配布しているらしい。ぜひ「三越」でも実施してもらえないだろうか。

 後日,改めて会社の近くの「洋服の青山」へ出かけた。今度は,店員が5㍍ぐらい離れたところで私が物色しているのを静かに見守っていて,試着の段になってこちらから呼んだらさっと駆けつけてきた。ただ,遠慮していたのではなかった証拠に,その後の店員の対応はてきぱきとしており,その巧みな接客が気に入った私は,「こちらのスーツは少し高めですが,二着目が千円です」という勧めに応じて二着購入した。やっぱり,財布のヒモを緩めるか否かは接客如何だなと感じた次第である。

 “自分は接客なしのセルフスタンドの経営者のくせに何を言っていやがる”と思われるかもしれない。しかし,扇風機を売る場合と,紳士服を売る場合と,ガソリンを売る場合では,それぞれ売り方が異なって当然である。GSに関して言えば,私のようなタイプの人間は,まずフルサービスのGSには絶対に行かない。そのうえで,給油しているあいだにスタッフがあれこれ話しかけてくるセルフスタンドも願い下げだ。しかし,一方でスタッフがフィールドで客を無視して私語を交わしているのもイラッとする。で,結局“ガソリンの自販機”こそが私自身の“最も行きたいセルフスタンド”ということになったわけだ。しかし,その理念を貫くことは容易ではない。

 先日,たまたま私が店番をしている時に,高齢の女性客に呼び出された。「給油してちょうだい」「すみません,うちはセルフですからお客様ご自身でお願いいたします」「このあいだは,別の店員さんに給油していただいたわよ」「…申し訳ございません。当店はセルフ方式でございまして…」「ところで,このあいだ三千円分給油してもらったんだけれど,燃料メーターがちっとも上がってこないの」「…さあ,そう言われましてもちょっと当店では何とも対応いたしかねます…」「じゃあ,ワタシどうしたらいいの?」「自動車ディーラーで調べていただいてはいかがですか。とにかく給油はご自身でお願いいたします」「でも,ワタシ給油したことないのよ…」「簡単ですから,やってみてください」─。

 しばらく,こんなやりとりが続いたが,近所のフルサービスのスタンドへの行き方を教えて,そちらに行ってもらった。後日,給油をした「別の店員」には,たとえ親切心からでも,会社の“掟”を破るような行為を行なうなら,他のスタッフに迷惑をかけるうえ,親切が仇となるようなクレームを被ることもあるということを説明し,厳重に注意した。こんな私のことを,親交のあるGS経営者から「セルフ原理主義者」と言われたことがあるが,賛辞と受け止めている。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ