セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.426『JAL再建』

政治・経済

2012-09-24

 「やればできる」とは,まさにこういうことなのだろうか─。日本経済史上最大規模の経営破綻からわずか2年8ヶ月で再上場を果たした日本航空。世界最多の保有台数を誇ったジャンボジェット機をすべて売り払い,国内線の3割,国際線の4割を廃止。従業員の3分の1にあたる16,000人を削減したうえ,労働組合を説得して賃金の大幅削減を受け入れさせ,人件費は破綻前の4300億円から2200億円に圧縮。高すぎると非難された企業年金の支払い額も最大で半分をカット。その結果,2012年3月期の営業利益(連結)は,更生計画で見込まれた641億円の3倍を優に超える2049億円と,過去最高益を達成した。

 奇跡のV字回復を成し遂げることができたのは,会長に迎えられた京セラ創業者・稲盛和夫氏の辣腕に負うところが大きい。就任1ヶ月後の記者会見で,「(JALの幹部社員は)損益ベースで考える人があまりにも少なく,いまの考え方では八百屋の経営も難しい」と批判,「親方日の丸」体質からの脱却を訴える一方で,前述のようなすさまじいリストラをひるむことなく敢行してきた。やはり,企業経営の要諦は“入るを量りて出ずるを為す”ということか。格安航空会社の参入など,激しさを増す航空業界で日航が“安定飛行”を続けてゆくためには,慢心することなく採算経営に徹するか否かにかかっている。

 V字回復の影で,大勢の人々の人生が暗転し,犠牲となったことは想像に難くない。それは,かつて再建された数多の企業においても生じたきたことである。当事者やその家族にとっては,会社の再建よりも自分たちの生活の方が重要であることはいうまでもない。それでも私は,あくまでも前向きなリストラは積極果敢に行なうべきだと思う。会社も人間と同じ“いきもの”である。痛みは伴なっても,手遅れになる前に手術を施すなら救われる命もある。仮に10人の従業員を抱える会社が,リストラをためらってその全員を路頭に迷わせるのと,5人を辞めさせて,残りの5人の雇用を維持しつつ経営を続けてゆくのとではどちらが世の中に貢献しているか。そんな当たり前のことができないでいる会社が,大企業から零細企業に至るまで,日本にはまだたくさんあるようだ。もちろんGS業界の中にも。

 稲盛氏が編み出した「アメーバ経営」は,部門別採算制度を導入することを柱とした経営管理手法である。複数の店舗を持つGSであれば,店ごとの採算を明確にすることだ。「オレの店は社内ナンバーワンの販売量だ」と威張ってみても赤字なら会社の足を引っ張っているだけ。さらに,一店舗を事業別に細分して採算性を精査してみると,「うちの店は洗車機がないほうが利益が上がるじゃないか」ということが見えてくる。大型店舗を持つことの「意義」だとか,洗車機を設置することの「効果」などといった“言葉”に幻惑されて,肝心の“数字”に目を向けようとしなかったのがかつてのJALなのだ。

 航空機業界では,「ユニットコスト」という指標がある。「1座席を1キロ㍍運ぶのにかかる費用」のことで,JALは徹底的なコスト削減によって,破たん前と比べて,これを2.4円も下げることに成功した。我々も,「1台を1回給油させるのにかかる費用」として,GS版「ユニットコスト」をはじき出し,それをもとにガソリンマージンや油外収益を設定してゆくべきだ。つまり,基本はあくまでもコスト。フルであろうが,セルフであろうが,いまだに高いガソリンを仕入れ,稼働率の低い機器類を抱え,手持ち無沙汰の従業員に賃金を払っているようなGSが,これからも悠々と飛び続けることができるほど,GS業界という空域は穏やかではない。

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