セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.427『コミュニケーション!』

GS業界・セルフシステム

2012-10-01

 ネット社会の進化に伴ない,若者のコミュニケーション能力が低下しているという。あいさつができない,敬語や丁寧語がわからない,言葉を知らないなど,人と関わるためのツールが乏しいため,人と会って話をすることはもちろん,電話をすることすら億劫になり,親や友だちとの“会話”は専らメールで行なうようになっているというのだ。しかし,メール,特に携帯メールが不得意な私などから見れば,メールで用件を伝えること自体,それはそれでひとつのコミュニケーション能力ではないかと思う。つまり,コミュニケーション能力が低下したというよりも,コミュニケーション様式が変化したに過ぎないのではないか。まあ,さすがに彼女との別れをメールで済ませたなんて話は寂しい気がするが。

 人と会話することが苦手な人にとっては,ガソリンスタンドの店員とのやり取りもストレスを感じるものなのかもしれない。「こんにちは,いらっしゃませー,満タンですか?」と声をかけられ,「えーと,あのー,千円分…」と答えるのがやっと。大体,なんで「満タン」なんだ? 普通,どんな商品でも数量とか金額を指定して買うものなのに,ガソリンだけ「満タン」っておかしいだろ─そんな疑問を抱きながら注文すると,従業員が“千円か”と見下したような顔で応対する。下手をすると窓拭きもしてもらえない。拭いてもらったらもらったで,拭かなかった方がマシといいたくなるような状態。も~アタマに来る。でも,文句が言えない,客なのに。

 しかし,もっとも厳しいシュチュエーションは,「エンジンを点検しましょうか」とか「洗車しませんか」などと“声かけ”されることだ。わたしも,デパートやスーパーの食料品売り場で試食を勧められるのがとても苦手だ。断るのが不得意なのだ。それで,試食コーナーの前を通らないようにしたり,売り子さんの目を見ないようにして通り過ぎるかして,声をかけられないようにしている。セルフなのに,スタッフが近づいてきてあれこれと勧めてきたりするGSもあるが,会話が下手な人や,人見知りする人にとっては,“声かけ”されることは,たいそう苦痛なのだ。

 そんな人たちが増えている世の中にあってセルフスタンドが定着してきたことは必然といえるかもしれない。セルフが客から支持されるのはただ安いからだけではない。セルフの登場によって,人々は給油が面倒な会話を交わさずに簡単に行なえることだと知り,そのスタイルを好んで受け入れたのである。運動会シーズンのこの時期になると, 元売各社や大手販売店は,決まって「ドラコン」─ドライブウェイコンテストを開催する。主催者は『コミュニケーションが希薄になっているいまこそ,フルサービスによる“もてなしの心”をよみがえらせよう』と訴えるが,私に言わせれば,完全にトレンドを見誤っているとしか思えない。

 従来のコミュニケーション手段が通用しなくなっているにもかかわらず,相変らず一方的な声かけをさせても,実効性は上がらないだろう。これぞまさに,コミュニケーションギャップである。しかし,セルフスタンドがこれほどまでに増え広がっているにもかかわらず,いまだにフルサービスのほうが勝っているという考え方をしている人たちが何と多いことか。また,セルフに改造したあとでも,フルサービス時代の思考パターンが払拭できず,「給油以外はフルサービス」という馬鹿みたいなセルフスタンドを運営している経営者もいる。ここまで来ると,もはやコミュニケーション障害を起こしているとしか思えない。

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