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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.430『ムコドノ』

社会・国際

2012-10-22

 「ムコドノ!」と聞くと,「必殺仕事人」の藤田まこと演じる中村主水が,菅井きんの姑に叱られるシーンを思い浮かべてしまうのだが,今回は,名古屋市東山動物園から脱走した雄のニホンザル「ムコドノ」の話。もともと野生のサルで,2010年に4月に,当時雌ザルばかり11匹いた動物園のニホンザル舎に勝手に入ってきて,雌7匹との間に子ザル8匹をもうけるという,その名のとおりの“入婿状態”にあったのだが,「もうこんな生活,耐えられねぇ!」と思ったのか,今月15日にニホンザル舎内の鉄塔から大ジャンプを敢行し,壁を飛び越え逃走した。以後,名古屋市内のあちこちで目撃されていたが,22日に市内の住宅街で捕獲された。

 ニホンザルに限らず,動物園で暮らす動物たちは皆,本来なら大自然の中で自由に生活していたわけだから,逃げ出すのは“本能”の為せる業なのだろう。ただし,自由には責任も伴なう。エサを得るのも,つがいになるのも,子どもを育てるのも,すべて厳しい自然環境の中,自らの力で行なってゆかねばならない。塀に囲まれ,喰いっ逸れることもなく,日々平和に暮らせる動物園にいるほうが,よほど幸せに思えるのだが,GS経営者のあなたが動物だとしたらどちらの道を選ぶだろうか。動物園にいるほうがいいという方は,元売系列店として長生きする道を進んだほうがよろしかろう。危険が伴なっても野生でいたいという方はPB派だ。

 しかし昨今では,動物園,すなわち,系列という塀の中にいれば安心というわけにはいかないようだ。動物園の経営も厳しいようで,「エサ」は以前と比べるとめっきり少なくなっている。エサをたくさん食べる大きな動物ほどその影響は大きいようで,先日も北九州市の系列を代表する特約店が,最盛期13店舗から3店舗までやせこけた挙句に倒産した。また,最近では,元売は死んだ動物の内蔵や筋肉を掻き出して,100㌫子会社というぬいぐるみに次々と作り変え,園内を歩き回らせている。やがてぬいぐるみばかりになってしまったら,そのまま遊園地に衣替えすればよいと考えているのかもしれない。

 一方,「ムコドノ」のように,系列の塀を乗り越えて自由の身となったPBスタンドだが,外の世界は決してパラダイスではない。動物園にいた時のように,贅肉を付けてゴロゴロしていたのでは,とても生き残れない。どんなに腹が減っても自己責任でエサを捕獲しなければならないし,激しい縄張り争いを余儀なくされることもしばしばだ。中には,厳しい環境に耐えかねて,再び動物園に戻ってゆく者もいる。しかし,それはあくまで少数で,動物園から脱走するGS経営者の数は年々増加している。やはり,動物園の居心地が急激に悪くなっているからなのだろう。動物園の経営者(元売)は,この現実をどう考えているのだろう。

 22日の「ムコドノ」捕獲作戦は,動物園職員や警察・消防など総勢30人によるものだったが,元売を脱走しても,“去るサルは追わず”で,再び連れ戻そうと元売が躍起になったという話は終ぞ聞いたことがない。“脱走”を恐れているのは動物園のほうではなくて,実は動物のほうだったりする。いまさら,野生の世界に出て行けと言われても,エサの獲り方も喧嘩の仕方も知らないのであれば,さもありなん。ならばいっそのこと,飼育係(元売の担当者)に向かって吼えたり唸ったりするようなことはやめて,一日でも長く世話してもらえるよう,カード獲得やらオイル拡販やらと,いろいろな芸をこなしてご機嫌を取った方が賢いとも思う。

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