セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.444『改正消防法』

GS業界・セルフシステム

2013-02-04

 全石連は,今月から改正消防法が厳格化されたことに伴ない,今年度中に2千軒を超えるガソリンスタンドが閉店するとの試算を発表した。ピーク時に6万軒を超えていた国内GSは2011年度末には約3万8千軒まで減少しているが,今後一段と減少スピードが加速するとして,先週はメディアも盛んにこの件について報道していた。

 とりわけ,地方新聞は「町からガソリンスタンドが消える」といった,センセーショナルな響きの見出しでこの出来事を伝えている。どの記事も,廃業するGS店主の「お客さんからの『やめないで』という声はつらい」といったつぶやきや,「永年この地域の生活を支えてきた店がなくなってしまうのは寂しい」といった客の声を取り上げ,いささか感傷的な論調で書かれている。

 確かに,高齢者世帯の多い中山間地では,GSの閉店は生活の安全を脅かす深刻な問題となっているのかもしれないが,石油元売から見れば,販売量が少ないうえに運送コストがかかるそれらのGSがとっとと閉鎖してくれるのは,経営効率を高めるうえでは好都合である。表向きは,環境保全の一環と見られている今回の法改正だが,実は一番歓迎しているのは元売ではないだろうか。

 事実,元売各社は,そうした「本当にGSを必要としている地域」に資本投下することはせず,「これ以上GSが必要ないと思える地域」に大型セルフGSを建設し,零細特約店の卸値よりも安い価格でガソリンを販売させている。やむなく閉店せざるを得ないGS店主から見れば,“そんなことにカネを使うぐらいなら,我々の運営継続のためにもっと支援してくれてもいいんじゃないか”と言いたくなるかもしれない。

 だが一方で,GS側も40年以上も商売をしていたわけだし,その間には「いい時代」もあったわけだから,必要な修繕や改造のための予算を確保して,将来への備えをしておくべきだったといえる。十年一日のごとく過ごし,安い商品を仕入れる努力や,運営コストを削減する努力を怠ってはいなかったか。

 私自身,これまで主に東海地方の中山間地のGSを何軒も訪問しセルフ化を提案してきたが,耳を傾ける人は少なかった。「都会じゃともかく,お客さんに給油をさせるなんてこと,ここじゃあ無理だ」とか,「セルフにしたら従業員を減らさなくちゃいけないからウチはやらない」などの返事に,説得する気力も失せてしまったことを思い出す。地下タンク以前に,経営者自身が老朽化していては,多少の猶予期間を設けたところでGSの存続はかなうはずもない。

 今月から,すべてのGSが,地下タンクの寿命をにらみながら“廃業か継続か”の決断を迫られる。その期限が,1~2年であれば,むしろ話は早いのだろうが,10年後となるとどうか。改修工事費の3分の2に補助金が出るいまのうちに,あるいは消費税率が上がる来年4月までに工事をした方が得だとわかっていても,果たして肝心の店が10年後まで存続できるだろうか。できなければ,まったくのムダ金となってしまう。後継者は決まっているか,戦略は描けているか,予算のめどは立っているか─。

 すなわち,今回の改正消防法は,GS経営者がそれまでにやってきた商売の“結果”を問うと同時に,この先も商売を続けてゆく“自信”と“覚悟”があるかどうかを試みる機会ともなっているのである。

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