セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.453『襟裳岬』

GS業界・セルフシステム

2013-04-08

 「北の街ではもう 悲しみを暖炉で 燃やしはじめてるらしい」─。吉田拓郎と岡本おさみの名コンビが生んだ数ある名曲の中でも,森進一が歌って大ヒットした『襟裳岬』はとりわけ有名だ。この曲のおかげで,襟裳岬は北海道を代表する観光スポットになったのだが,このたび,その地区の唯一のガソリンスタンドが閉鎖した。

 『同店は1971年の創業で,襟裳岬の観光がブームだった頃は一日100人以上の利用があったが,東日本大震災以降の利用客は一日数人に減っていた。このGSの経営者によると,消防法改正に伴う改修に数百万円かかるうえ,潮風にさらされる計量機などの設備が傷みやすく,廃業せざるを得なかったという』─4月3日付「読売新聞」

 このコラムでも何度も取り上げたとおり,今年の2月から改正消防法が厳格化され,全国の市町村からGSが姿を消している。しかし,仮に地下タンクの補修問題がなかったとしても,来店客が「一日数人」の状態では,遅かれ早かれ閉店せざるを得なかっただろう。そういう意味では,今回の改正消防法は,地下タンク漏洩事故の予防という本来の目的以上に,石油元売の経営効率化に寄与していると言えそうだ。

 一方,まだ営業を続けようとしているGSは,地下タンクの寿命が来る年から逆算して,この先の経営を考えてゆかなければならない。改修工事費の3分の2に補助金が出るいまのうちに補修工事をしておいた方が良いのだろうが,それでも数百万円のお金が必要だし,それだけの投資をしてでも続けるだけのポテンシャルが自分の店に在るかどうかをこの機会に見きわめる必要があるだろう。

 私の会社が運営する「セルフスタンド日進東」は賃貸店舗なのだが,地下タンクが改修を義務付けられるまであと17年ある。工事費用は大家さんが負担するのだが,「和田さんがこれから40年借りてくれるのであれば考えます」と言っていた。確かに,17年後もまだ私の店が存続しているかどうかもわからないのだから,もうしばらく経ってから考えてもよかろう。まるで『襟裳岬』の歌詞のようだ。「わけのわからないことで 悩んでいるうち おいぼれてしまうから」─。

 それよりも,目下の関心事は,やはり急激な円安による仕入れ価格の高騰だろう。日銀がお札をじゃんじゃん刷って,国債をどんどん引き受けて,株価ががんがん上がって,最後に破綻しちゃったらどうなるんだろう。ブレーキの壊れた自動車のように,ハイパーインフレに突入し,ガソリンが1㍑千円とか二千円とかになっちゃったりしないんだろうか。商売柄,円安が進むことにはどうしても不安を感じてしまう。

 それにしても我がテリトリーである日進市では,先月に引き続いて,元売系列店がほとんどマージンゼロの水準で販売競争を繰り広げている。仕入価格が高止まりで推移しているというのに…。恐らくどこのGSも思ったように売れていないのだろう。3月のガソリン出荷数量の統計が出てみないとわからないが,私の店も含め,どこの店もあまりお客さんが入っていないように見受けられる。GS業界はいつまでデフレ状態を続けるのだろう。こんなことを続けていると,本当に襟裳岬みたいになっちまう。「何もない春ですぅ~」と唄いたくなるきょうこのごろだ。

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