セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.464『パンドラの箱』

GS業界・セルフシステム

2013-07-01

 やはり今週は“あの事”を取り上げざるを得まい。(というか,ほかにコレという話題もないものですから) 例の6月28日付「日本経済新聞」の記事のことである。ものすごく掻い摘んで書けば,公取が近々石油元売に対して系列店が業転を買うのを認めてやれと求めるらしい。いま,石油業界は上も下もこの記事を巡って喧しい。もし元売がこれに従うことになったら,GS業界にどのような変化が生じるかについては,すでに7月1日付「油業報知新聞」でCOC事務局の関匡氏が的確に解説しているのでそちらに譲るとして,私のような,すでに全量業転玉を仕入れているGS経営者には,「へぇ~」とつぶやくだけのことに思える。GS業界には,自分たちの業界のことが「日経」に載るとひどく興奮して大騒ぎする人が多いなぁと感じるのは私だけだろうか。

 一方,これまで元売の目を盗んで浮気をしていた系列GSの経営者の方は,晴れて“一夫多妻”を宣言できると喜んでおられるかもしれないが,そうなれば,系列玉から,差別対価としての“ブランド料”が掛からなくなる代わりに,毎月のマーク使用料,POS使用料,広告宣伝料,販促支援料などを元売からしっかり請求されるかもしれない。また,元売へのツケは利かなくなり,業転玉同様,現金先払いでの取り引きを要求されることも覚悟しておいた方がいいだろう。

 そもそも,これまで業転玉を仕入れてきた系列GSの多くは,“マークなんかいつでも取っ払ってもらって結構ですよ”という心持ちでいたことだろう。むしろ,元売の方がマークが無くなってしまうのを怖れて浮気を黙認していたというのが実情ではあるまいか。したがって,今回の公取の要求は,元売に「そこまでおっしゃるのであればこうさせてもらいます」と開き直りとも言える厳格かつ徹底的な代理・特約店政策を取らせる“口実”を与えてしまったようにも思う。

 これを機に,元売販社や事実上子会社となっている代理・特約店は,天下御免で安売り量販を仕掛けてくるだろう。前述の関氏は,全石連が元売の優位的地位の濫用を訴えた結果,瓢箪から駒の如く生じた今回の出来事を「パンドラの箱を開けた」と評している。ギリシャ神話の中で,エピメテウスが,亡き兄プロメテウスから決して開けてはならないと命じられていた黄金の箱を,妻パンドラにしつこくねだられたため遂に開けてしまった途端,人間社会にねたみや憎しみや悪だくみなどが広まってしまったというお話だが,さしずめ全石連は,GS業界にさらなる価格競争による辛苦を撒き散らしてしまったのではないか。

 しかし,プロメテウスは生前,箱が開けられてしまうことを見越して,あるものを一緒に入れておいた。それは「希望」である。今回の公取の要求によって,ただでさえ儲けの薄いGS業界は,ますます厳しい環境を迎えることになりそうだが,「希望」がないわけではない。どこで買ってもまったく違いのないガソリンという商品を,どこでも同じような価格で売るようになったら,あとはもう油外商品で稼ぐか,コスト,とりわけ人件費を削るかのどちらかだ。(両方ともできれば言う事無しだが) 私は,いよいよ以ってローコスト・セルフへの転換が避けられない状況になりつつあると感じている。そこに私は,患難を生き残るための「希望」を見いだしている。

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