セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.481『革命』

GS業界・セルフシステム

2013-10-28

 『東京都府中市の倒産したガソリンスタンドを,元従業員らが再建し,営業に奮闘している。同GSは元々,別の運営会社が,セルフ式のGSにはない接客で長年,常連客の信頼を得ていたが,従業員たちが,残業代などを巡り,労働組合「東京管理職ユニオン」の協力を得て,会社側と団体交渉を重ねて矢先の今年1月に破産手続きが始まり,20人ほどいた全従業員も解雇されてしまった。

 組合活動に理解のある都内の不動産会社が,同GSの土地と建物を競売で落札し,元従業員に貸してくれることになったため,元従業員らは元の運営会社と和解し6月に合同会社を設立,不動産会社に賃料を支払う形で,GSを再建した。運営資金も不動産会社から借り,8月にはガソリンの提供ができるようになった。

 半年間,ガソリンが止まったブランクは小さくないが,元従業員で新会社の代表である高橋顕夫さんは「資金繰りは厳しいが,丁寧なサービスを心掛け,お客さんを取り戻すしかない」と話す』─10月23日付「読売新聞」。

 労使の対立から倒産・閉店した東京のGSで,元従業員たちが泊り込みで店を占拠し,洗車と整備だけの自主営業をしているという報道は,今年のはじめごろにネットニュースで見て知っていたが,元従業員だけの力では如何ともなるまい,早晩立ち退きの強制執行を食らうだろうと思っていたら,思いもよらぬ篤志家の出現で,奇跡ともいえる自主営業再開を成し遂げた。新会社の社名は,「エネルギー業界の革命児」との意味をこめて,「e-レボリューショナリー」。無論PBスタンドである。

 もちろん,前述の代表者の言葉どおり,いつまでも喜んでばかりはいられない。まだ自主「再開」にこぎつけただけで,「再建」できるかどうかはこれからの業績次第だからだ。だが,昨今,都市・地方にかかわらずGSが次々に閉鎖されてゆくご時勢に,自らの生活のためとはいえ,GSに立てこもって営業を継続させようなんて心意気のGS従業員がいたとは何とも痛快な話ではないか。何となく,教師たちの管理教育に抑圧された中学生たちが自衛隊の戦車を乗っ取って「戦争」を挑む,「ぼくらの七日間戦争」という日本映画(1988年)を思い出した。宮沢りえの第1回主演作。可愛かった~。

 現在閉鎖されてゆくGSの多くは,老朽化や不採算によるものだが,中には熱意と戦略を持った人に運営を任せればよみがえるGSもあるはずだ。経営者が“この店はもうダメ”と見切りをつけたとしても,現場のスタッフは“俺たちにもっと自由にやらせてもらえればうまく行く”と思っているかもしれない。ただ,如何せん彼らにはカネがない。従業員による企業再生を促す融資制度というものがあるにはあるのだろうが,今回の「e-レボリューショナリー」のように,強力なスポンサーが付いてくれないと難しいのが現実のようだ。

 石油元売が“エンジェル”になってくれる確率は万にひとつもない。こういう時こそ,いわゆる業転品を売る石油商社の出番ではないか。自社マークなんかにこだわらず,閉鎖したGSの中から優良物件を見つけ出して買い取り,我こそはと名乗り出る人に運営を任せてみてはどうか。元売がメンツにこだわって系列GSを減らし続けているあいだに,PBスタンドとして次々に再生させ,ジャブジャブに余っているガソリンや灯油を捌いてもらえば,縮み続ける日本のGS市場に“革命”を起こすことになるかもしれない。

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