セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.486『もう一度,「今でしょ!」』

オピニオン

2013-12-02

 年末恒例の「流行語大賞」。今年は,『じぇじぇじぇ』,『倍返し』, 『今でしょ! 』,『お・も・て・な・し』の四つの言葉が選ばれた。史上最多だそうである。私は「あまちゃん」も,「半沢直樹」もまったく観ていなかったので,このうちの二つにはまったく付いて行けなかった。特に「半沢直樹」は,銀行が舞台の企業ドラマだということ以外,どんな内容のドラマなのかさえいまだに知らない。

 むかしから“目には目を”という言葉はあるが,片目をつぶされたら両目をつぶしてやると言わんばかりの過激な言葉が流行るところを見ると,世の中相当ストレスが溜まっているのだろう。我が業界に,「相手が2円引きで売ったら,こっちは4円引き」,「それならこっちは8円引きだ!」なんて『倍返し』の連鎖が広がりはしないか心配だ。

 予備校の先生が,授業中に発した言葉が『今でしょ!』。これはGS店頭でたいそう重宝された言葉ではなかろうか。「お客様,だいぶタイヤが減っていますよ」「いつごろ交換したらいいかしら」「今でしょ!」と言った具合だ。私なんか,もう十年以上も前から,「いつセルフにしたらいいだろうか」と相談されるたびに,「今でしょ!」と勧めているが,すぐに行動に移すGS経営者は少ない。女性としての自意識は高いが,行動や結果がともなわなず,女性像をもつれさせている女子のことを『こじらせ女子』と呼ぶらしいのだが,GS業界には“こじらせ経営者”が結構いるようだ。

 東京五輪招致のプレゼンテーションで滝川クリステル女史が見事にキメた“口説き文句”『お・も・て・な・し』。もてなす側の都知事が医療法人からおもてなしを受けていたのではないかとの疑惑が持ち上がって,この言葉も,本来の意味とは違った用いられ方をされているように思うが,サービス業に携わる者の一人として,もてなしの精神は忘れてはならないと肝に銘じている。とはいえ,フルサービスに戻るつもりはまったくない。お客様のもてなし方は様々で,デカイ声であいさつしたり,大仰なお辞儀をすることが“おもてなし”のすべてではない。ローコスト経営に徹し,24時間365日,いつでも安く,早く,安全に給油できる店を開けておくことも,ひとつの“おもてなし”のカタチだと思う。

 時流に乗っかり「おもてなしの店」なんてキャッチフレーズの看板を掲げるフルサービス店が出てくるかもしれないが,看板倒れにならないように。油外を売りつけんがための作り笑いはお客にすぐに見破られる。大したおもてなしもできないうえに,ガソリン価格が他店より高いとなれば,ツィッターなどですぐに叩かれる。“○□町のGSヒドイ。もう『激おこぷんぷん丸』”ってな具合だ。

 今年も多くの同業者が倒産・廃業に追い込まれた。最終集計はなされていないが,おそらく今年も千件は越えているだろう。日本経済は『アベノミクス』効果で景気回復傾向にあるとのことだが,GS業界は相変らず『ダイオウイカ』のように,深い海の底に沈んだままだ。先ごろの報道では,石油連盟は昨年自民党に前年の5倍の五千万円を献金したとのことだが,少なくともその効果はGS業界にはなかったようだ。石油元売は,今後も合理化を推し進め,弱小GSを『追い出し部屋』的な位置付けをして淘汰を図ってゆくのではないか。元売に,『困り顔メイク』をしておねだりしても,『美文字』で綴ったお手紙で救済を訴えても恐らく無駄だろう。「業転」,「セルフ」,「PB」といった業界の流行語を口にすることをいまだにためらっている方々には,いま一度この言葉を捧げたい。『今でしょ!』─。

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