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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.494『石油,原発,ゴジラ』

エンタメ・スポーツ

2014-02-03

 度重なる太平洋での水爆実験により太古の眠りから目覚め,なおかつ巨大化した恐竜が東京湾に上陸,放射能を撒き散らしながら炎の海となった東京を蹂躙する─ご存知,日本が生んだ怪獣,「ゴジラ」である。

 1954年にゴジラが誕生して今年で60年。夏には最新SFXを駆使した「ゴジラ」が公開される。ただし,日本映画ではなくハリウッド製。1998年にハリウッドは一度,「ゴジラ」を製作している。そこに登場したゴジラは,我々が知るゴジラとは似ても似つかぬ“巨大トカゲ”で, 放射熱線を吐くこともなく,ニューヨークのビル郡の合間を全速力で逃げ回る有様で,世界中のゴジラファンから凄まじいブーイングを浴びた。果たして今回はどうか。予告編ではその全体像を見ることはできないが,よもや前回のような愚行を繰り返すことはあるまい。(www.godzilla-movie.jp)

 それはさておき,ゴジラといえば大抵は湾岸から上陸し,まずは林立する石油コンビナートを叩き潰し,炎に包まれながら咆哮するというのが“お約束”である。映画「ゴジラ」は公開当時,国民の十人に一人が観たほどのメガヒットとなり,翌年には「ゴジラの逆襲」が公開された。紀伊水道に姿を現わしたゴジラを陸地から遠ざけるべく,周辺都市には灯火管制が敷かれ,照明弾によってゴジラを太平洋上へと誘導する自衛隊の作戦は成功するかに見えた。ところが,脱走した囚人たちが運転するタンクローリーが石油タンクに突っ込み大火災を引き起こしてしまい,その炎に導かれたゴジラは大阪湾に上陸,あとを追うようにアンギラスも上陸し,二大怪獣の激闘が繰り広げられ大阪市は壊滅する。ちなみに,事故を起こしたタンクローリーに記されていたロゴは「CALTEX」。当時,日本石油は米カルテックス社と資本提携を結ぶ外資系石油元売だった。

 1964年に公開されたシリーズ第4作は「ゴジラ対モスラ」。ゴジラは大型台風が通過した四日市市の埋立地から出現,国内有数のコンビナート郡を破壊する。中部地方の業転玉は完全にストップしたことだろう。1993年の「ゴジラVSメカゴジラ」で,ゴジラは再び四日市港の沖合いに姿を現わし,コスモ石油の煙突を薙ぎ倒す。このように,ゴジラ出現のたびに日本の石油施設は甚大な損害を被ってきたのだ。

 一方,平成の世になってから,ゴジラは原子力発電所も襲撃するようになった。1984年に9年ぶりに登場した「ゴジラ」では,静岡県の架空の原発(浜岡原発がモデル)を破壊したゴジラが,原子炉の炉心を取り出し,放射能をすべて吸収すると再び海へと姿を消す場面があった。“ああ,いまゴジラが福島に現われてくれたら”などと考えるのは早計である。1995年「ゴジラVSデストロイア」では,体内に放射能を蓄えたゴジラ自身が核融合炉と化し,メルトダウンを引き起こすという恐ろしい結末が待っているのだ。

 こうしてゴジラの足跡を追ってゆくと,ゴジラは東北沖のエネルギー施設を一瞬で破壊した大津波のメタファーであり,いまなお放射能を吐き出し続け人類を寄せつけない福島第一原発そのものであるように思う。今夏公開のハリウッド版「ゴジラ」に出演する渡辺謙は,「作品では東日本大震災による日本の苦悩も描かれる」と語っているが,やはり,ヒロシマ・ナガサキ・フクシマと放射能による災禍にこれほど見舞われた国はないのだから,ここはひとつ,日本映画界の総力を結集して,還暦を迎えた和製「ゴジラ」を製作し,放射能災害の恐怖を全世界に知らしめるべきではないのか─。

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