セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.50『GSはアートだ!』

GS業界・セルフシステム

2005-03-07

 元売りの系列に属さない独立系スタンドを、通称「無印」と呼んでいる。ひと昔前は、「無印スタンド」と言えば、業界では、「出荷地が定かでない粗悪ガソリンを売っているやくざ者の店」という認識があり、事実、そうした店もあったようだ。しかし、1996年の特石法撤廃後、元売りの政策に嫌気が差した販売店が次々と独立するに至って、そうした偏見も過去のものとなり、「無印」はいつしか「プライベートブランド」というカッコイイ名称で呼ばれるまでになった。

 私の店も無印スタンドなのだが、オープンに先立ち、以前はモービル石油系のスタンドだったその施設の外観を、自分自身でデザインし塗装しなければならなかった。こういう時に、気合いを入れすぎると、余計な出費をしてしまうものだ。経営者は、いろいろな思いを込めてスタンドを飾り立てても、大半の客はそんなものに気づきもしない。事実、一般のドライバー(特に女性)の多くは、「エッソ」と「シェル」の違いすら分からない、というか、無関心なのだ。

 しかし、コンビニとなると、その違いは結構認識されている。自分が専ら利用する駅前のコンビニがローソンなのかセブンイレブンなのかはちゃんと分かっている。そこで、あれこれ考えるよりコンビニのデザインをそのまま真似まねることにした。そして、コンビニの中でも最もシンプルなカラーリングのファミリーマートのデザイン(水色と黄緑のラインのやつね)で外観を施すことにした。ところが、オープンして一年も経たないうちに、道路の向かいに本物のファミリーマートが出来てしまった。おかげで、スタンドに車を停めてコンビニへ行こうとする客に注意すると、「だって同じ店なんでしょ?」と言われてしまったり、コンビニの店員に、「スタンドのプリカ1枚ちょうだい」なんていう客がいたりして、思わぬ“併設効果”が生じる結果となってしまった。

 そんなこんなでもう5年も無印スタンドを経営しているが、何人かの人に「和田さんのスタンドはシンプルなデザインですね」というようなことを言われた。そりゃそうだ。白く塗った屋根と壁にファミマ調の二本線が入っているだけなのだから、良く言えば“シンプル”、悪く言えば“無味乾燥”ということになる。そういえば、「和田さんのスタンドって病院みたいですよね」と言われたこともあったっけ─。

 元来、シンプルなデザインが好みの私だが、やはり、多少は暖か味があったほうが良いかなーなどと柄がらにもなく考え、白い壁に絵でも描いてみようと思い立った。といっても、これを業者に依頼すれば、5万から10万円もの出費となる。そうかと言って絵心のない我がスタッフではどうにもならない。そこで、ダメモトで、近所の高校の美術部の先生に、うちのスタンドの壁に絵を描いてみませんかと持ちかけたら、OKとのことだった。この高校は、日進市の依頼で高速道路の架橋下のトンネルなどに絵を描いたりしていたのだが、暗いトンネルでは見てくれる人もなく、おまけにすぐ落書きされてしまうので、部員たちはもっとマシな所に描きたいと常々思っていたとのことだった。それなら、ぜひうちのスタンドの壁をキャンパスに使ってくださいということになり、つい先日、手始めに幅5メートル、高さ3メートルの防火塀の一部に描いてもらったのが、写真の絵である。芸術性の有無はともかく、半日がかりで先生と高校生たちが描いた力作である。制作費は、デザイン費ゼロ、人件費ゼロで、材料費6,470円のみである。次回は、4月中旬の予定なのだが、部員たちは早くもやる気満々である。こちらはローコストで防火塀をきれいにできるは、高校生たちからは作品発表の場を提供してくれたことに感謝されるはで、いい事づくしであった。これで、来店客が増えてくれれば言う事なしなのだが、そんなに甘くはないか。いずれにせよ、こんなことができるのも、“無印”ならではのことである。

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