セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.503『安さの質』

政治・経済

2014-04-07

 4月に入ってから散髪に行った。老夫婦で営む小さな床屋で,大人料金が1,500円と割安の割には丁寧な仕事ぶりで気に入っているのだが,今回1,700円に料金が値上がりしていた。「すみません,このたび料金を改定させていただきました」と申し訳なさそうにお釣りを渡してくれたのだが,1,700円でもまあ安い方だと思う。仮に,消費税引き上げ分だけの値上げであれば1,543円なのだが,今回の増税を契機に価格改定したということなのだろう。

 先月まで一杯200円だったコーヒーが220円に値上がりしていた,これは便乗値上げだ,けしからん!との声が消費者センターに寄せられたと夕方のニュースで報じられていた。確かにこれも増税分だけの上乗せなら206円ぐらい。でもさ,これまでデフレマインドの中で値上げしたくてもできずに我慢していた喫茶店の事情も少しは汲んでやってもいいんじゃないか?

 それと比べて,我々GS業界の清貧さにはほとほと感心する。ガソリン仕入れ価格(税抜)は4月に入り1円程度値上がりしたのだが,愛知県日進市のガソリン価格は, 1日の時点では157~160円だったが,この一週間で152~154円にまで値下がりしている。確かに3月までの駆け込み需要の反動はかなりのもので,どこのGSもいまだガラガラだ。3月31日にあれだけ客が来れば当分は売れっこないのだが,辛抱たまらず,早くも“消費税還元セール”に走るGS業界を見ていると,やっぱりGSは価格を下げるしか能がないのだなとつくづく思い知らされる。

 一方,今月1日のNHK『クローズアップ現代』を観ていたら,セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文会長が,20年近く続いてきた低価格競争からの脱却を宣言していた。「安さの追及ではなくて,質の追及にしなさい,質をいいものにしなさい。仮に価格が多少上がってもいいんじゃないか。価値の追及になれば,結果として低価格競争から脱していけるのではないか」─。実際,増税直前にシンクタンクが消費者意識を調べたところ,増税後,「とにかく安いものを買う」と回答したのは29%で,それを上回る40%の人が,「価格に見合った品質のものを買う」と回答しているそうだ。

 GS業界でも「安さではなく質を追及」すべきなのだろうが,どこで買っても同じ品質で,価格以外に他店と差別化できるものがないガソリンでは,なかなか難しい。また,元売が質より量を追求する姿勢を崩していない以上,価格競争はGS業界の宿命として甘受するほかあるまい。ゆえに問題は,「安さの質」を追及することだ。

 ガソリン消費が年々減少してゆく環境下で,価格競争から脱落しないよう走り続けるためには“入るを量りて出ずるを為す”すなわち,まずいかにして安く仕入れるか。業転ガソリンの仕入れチャネルを増やすのか,それとも元売から有利な条件を引き出すべく交渉術を駆使するのか。さらに,何もかもが値上がりする中で,一段のコスト抑制は避けて通れない。あるいは,ガソリンの利益がゼロでも食っていけるほど強靭な油外収益力を手に入れるか。いずれにせよ,安売りはとかく能なしの商法のように思われがちだが,然にあらず。安く売るためにはそれなりの知恵と技術が必要なのであり,「質の高い安売り」ができなければ,生き残れないだろう。

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