セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.504『人手不足とどう向き合うか』

社会・国際

2014-04-14

 牛丼チェーン大手「すき家」の店舗が次々と閉店しているとネットで騒ぎになっている。ツイッターや掲示板には閉店情報と閉店した店舗の写真がアップされていて,店の入り口には「従業員不足に伴い,一時的に閉店させていただきます」などといった張り紙が出ている。実は,今年の2月下旬からネットの掲示板などに「忙しすぎてやってられない」,「もう辞めたい」などといった,従業員と思われる人たちの書き込みが増えていたらしい。

 その理由は2月14日から始めた「牛すき鍋定食」の販売で,このメニューを提供するのに時間と手間がかかりすぎるため,ただでさえ人手不足の厨房がまわらなくなってしまったことへの不満があるようだ。以前から「すき家」は,他の牛丼チェーンに比べてメニューが多いとか,深夜のワンオペ(一人でオペレーションすること)が多く強盗に襲われやすいなどの声が,ネット上で数多く投稿されていた。

 これは,ガソリンスタンド業界にとって決して“対岸の火事”ではない。景気回復に伴なう労働需給の逼迫が,GSの運営にとっても一層の脅威となりつつある。何せ,不景気な時でも,慢性的な人手不足だったほど人気のない業種である。「キツイ」「汚い」「給料安い」の“3K職場”の代表格のようなGSは,今後も人手不足に悩まされることになりそうだ。ましてや,優秀な人材が集まることなど,ほとんど期待できない。

 しかし,幸いにしてGS業界では,セルフ化という対処手段がある。どうせ人手不足なら,いっそのこと客に給油してもらおうという逆転の発想で,少人数でも無理なく安全に店舗を運営できるうえ,人件費コストの抑制も実現できるという一石二鳥の手段を編み出したのである。

 ところが,のんびり店番させているのはもったいないとばかりに,元売各社は,板金修理だの,中古車販売だの,レンタカーサービスだのと,様々な“新メニュー”を考案し,セルフGSでの販売を推し進めている。今後一段と深刻化する人手不足問題にきちんと向き合わずに,経営者が机上で作ったメニューやオペレーションを現場に押しつけると,「すき家」のように,「もう無理!」「やってられるか!」ということになり,労務倒産を引き起こすことだってあり得る。事実,都市部においては,人手がかかる大型・重装のセルフGSが運営不能に陥り,一時閉鎖に追い込まれたとの話も聞く。

 人口減少という構造問題もからんで,日本では現在6割超の業種で人手不足が生じているといわれる。そのため厚労省では,外国人労働者の受け入れの緩和・拡大の検討に入っている。また,経済財政諮問会議は2月の分科会で, 年20万人の移民を約50年間受け入れれば,中期的に1億人の人口を保てるとの試算をはじき出しているが,いわゆる「国のカタチ」にもかかわる問題のため,慎重論が支配的だ。それに,もし一定程度の外国人労働者を雇える環境になったとしても,建設,運輸,介護,外食などの産業との熾烈な争奪戦を繰り広げなければならないことは火を見るより明らかで,そのために費やされるコストもまたGS経営を圧迫する要因となる。

 結局のところ,我々の業界は,これからも人手不足を“宿命”ととらえ,うまく付き合ってゆくしかないのであって,ゆえにいま一度,セルフシステムの原点に立ち返った店舗運営を確立すべきである。

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