セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.525『今度は軽油?』

GS業界・セルフシステム

2014-09-15

 過当競争でガソリンの利幅は一向に改善されない。そこで軽油に,予め識別剤「クマリン」を除去した灯油を混ぜて,32.1円/ℓの軽油引取税の比率を出来る限り圧縮して儲けようとする業者はいまも後を絶たない。先日も,奈良県橿原(かしはら)市で,3年以上に渡り脱税軽油を密造していた業者が当局の捜査を受けたと新聞で報じられていた。ネット記事の写真によると,当該業者が脱税軽油を販売していた自社GSは,歴とした「昭和シェル」マークを掲げる店舗だった。

 これまで愛知県でも,脱税軽油の摘発は幾度もあったが,末端で販売するGSの多くは,いわゆる“無印”だった。こうした,一部の不届きな輩のおかげで,PBスタンドで販売されている商品は品質に問題があるとの風評をもたらしてきたわけで,年間約18万円もかかる品質分析を義務付けられる要因ともなっている。

 しかし,今回の橿原市では元売マークを掲げるGSで販売していたということで,昭シェルも何らかの対応をせざるを得ないだろう。元売にとっても,甚だしいイメージダウンとなるわけだから,気の毒なことだ。奈良県内の他の昭シェルマークGSにとっても,このうえなく迷惑なことだと思う。

 数年前のこと,とある県税事務所に勤める“軽油Gメン”の方と話す機会があった。何ヶ月,時には一年以上も前から内偵していたGSに強制捜査を敢行するまでの苦労話は,あの伊丹十三監督,宮本信子主演の映画「マルサの女」(1987年)をほうふつとさせた。いや,あの映画では,捜査官と被疑者とのあいだの丁々発止のやりとりが面白おかしく描かれていたが,現実はもっとシリアスで容赦のないものだと彼は語っていた。「インチキ軽油作りは割に合わないということを思い知らせてやらなくちゃならんのです」─。

 ところで,話は変わるが,マツダは今秋,約7年ぶりにフルモデルチェンジする新型デミオに1.5㍑ディーゼルエンジンを搭載するとのことだ。カタログ燃費はまだ非公開だが,リッター最大30㌔の燃費性能を誇り,エコカーの分野で後塵を拝してきたマツダが,この新型デミオで一気に巻き返しを図ろうとしている。また,ホンダも1.6リッター新世代ディーゼルエンジンを搭載した新型シビックを,来年1月に欧州で販売すると発表した。燃費は脅威の33㌔/ℓだとか。

 これまで,“うるさい・重い・回らない”と敬遠されてきたディーゼルエンジンだが,今後市場に投入されるそれは,静かなうえに高回転,おまけに排気ガスもきれいという,これまでのイメージを覆すものとなる。私も先日,友人が最近購入したというマツダCX-5ディーゼルに載せてもらったのだが,ホントに静かで加速もスムーズ。「何より燃料代がガソリン車と比べて2割近く節約できるからいいね~。和田さんには申し訳ないけど」「いやいや,電気自動車に比べれば,軽油でもなんでも石油を使ってもらえるだけマシだよ」─。

 というわけで,この先ますますガソリン需要は尻すぼみとなる一方で,軽油の需要は僅かながらではあるが増加するかもしれない。だからといって,ガソリン同様,馬鹿な価格競争はしないでもらいたいものだ。もちろん,脱税軽油なんて業界の信用を貶めるだけだ。だが,私の悲観的予想では,仮にディーゼル車が増え続けるようになれば,軽油市場のおける安売り&脱税は,いまより盛んになるだろう。論理的根拠はない。ただ,GS業界とはそういう業界だから,というだけのことだ。

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