セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.526『プリカとハサミは使いよう』

GS業界・セルフシステム

2014-09-22

 『今月(8月)は洗車プリカを買うとその場で使える「7円引き給油券」を差し上げるキャンペーン中です。販売エリア内でチーム対決方式で実績をフォローし販売を盛り上げます。それは,時折激しい雨の台風の中でも続けられました。悪天候の中,洗車したのはたったの1台。プリカ実績無しで閉めることになる。一緒にいたスタッフが「このままではまずい,プリカを買う」と言い出し,3枚のプリカを購入しました。思わずその熱意に負けて私も2,600円のプリカ2枚を購入。ほぼ半日の稼ぎ分です』─。

 これは,某石油元売の100㌫販社GSに勤めるアルバイト社員の男性が,同社の組合新聞に投稿した記事の一部である。実績をあげるために,スタッフが自腹を切って商品を購入することは,程度の差こそあれ,ほとんどの業界で見られる光景であり“自爆営業”と呼ばれているが,いくらなんでも,台風のさなかに洗車プリカが売れなかったからといって,そこまでしなくてもと感じたのは私だけだろうか。一方,台風のさなかに洗車プリカを売らせるとは会社もどうかしている。キャンペーンは天候が回復するまで一時中断すればよいと思うのだが。

 それにしても,「洗車プリカを買ったらガソリンが7円引き」って,なんか違うような気がする。「ガソリンを何㍑以上給油したお客様に,洗車を一回半額サービスする」というならまだしも,ガソリンスタンドがガソリンを事実上景品にするなんておかしくないか?そこまでして洗車プリカの販売に執念を燃やすのは,やはり手っ取り早く油外売上をあげることができるからだろうか。私の店の周辺でも,「5千円の洗車プリカがいまなら2,500円!」というキャンペーンが頻繁に行なわれており,洗車需要の“先食い”が常態化している。

 一方,ガソリンや軽油のプリカは,いまでは安売りツールとして定着し,市況破壊の元凶とまで言われる有様。GS業界人ならだれでも知っている東京都の某量販店は,現在「8万円プリカで8円引き」とのこと。8万円プリカか…ウチでも売ってみようかな。やっぱやめとこ。日進市では,8万円プリカなんてだれも買ってくれないだろうし,仮に売れたとしても“8円引き”なんてやったら赤字ですがな。

 利益度外視の値引きをしても高額プリカを販売するのは,やはりまとまった現金売上が見込めるからだろう。厳密に言えば,プリカを販売した時点では,その現金は「預かり金」であり,商品(ガソリン)を購入した分だけが「売上」として計上されることになるのだが,お金に色はついていないので,その潤沢な現金を回転させながら,さらなる安売り量販を続けることができる,というわけだ。しかし,過去にはその“回転”が滞って倒産したGSが,高額プリカを購入した客に被害をもたらしたという事例も各地で生じている。

 ─だからプリカはダメなのだ,とする向きもあるが,このコラムでも幾度となく述べてきたように,プリペイドカードとは,セルフスタンドにおいて代金決済を簡素化させるためのツールであって,量販のためのそれではない。釣銭を払い出すための手間を無くすことによって,セルフスタンドを運営するにあたって生じる種々のリスクを軽減させることができるのだ。そこのところを理解せぬままプリカを否定している“食わず嫌い”のGS経営者はまだまだ多いようだ。

 とにかく,GS業界においてプリカは,本来の有効な用いられ方をされることが少なく,常軌を逸した価格戦争の“兵器”となってしまっていることが問題なのだ。これ以上,プリカを“誤用”するのは止めてもらいたい。

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