セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.531『超人手不足時代』

GS業界・セルフシステム

2014-10-27

 様々な業種で人手不足が深刻化している。先月,牛丼チェーン「すき家」は,人手不足のため店舗の約6割にあたる1167店舗で深夜営業を当面休止すると発表した。深夜の時間帯に従業員が一人で接客から調理,清掃までも行なう“ワンオペ”に対して,「すき家」で働くアルバイト従業員たちから,「もう限界」,「疲れた」などのつぶやきが広まり,「すき家」は第三者委員会を設置してこの問題を検証した結果,今後全店でワンオペを解消させることを決定した。ところが,首都圏では時給を1400円まで引き上げても人が集まらず,前述のとおり,大幅な戦線縮小を余儀なくされた。

 GS業界でも,人手不足はもはや慢性的な問題となっている。東北地方の復旧・復興に加えて,オリンピック開催やリニア建設などの特需もあって,建設業界はこれから猫の手も借りたいほどの忙しさとなる。それに加えて,運送業,飲食業,サービス業などありとあらゆる産業が,労働力の争奪戦に参入してくる。時間給をはずみたくても,厳しい価格競争の無間地獄にあるGS業界にあってはままならない。私は,この先GS業界が十分な労働力を確保するのは絶望的だと見ている。

 しかし,幸いなことに,GS業界にはセルフという対処策がある。本来は,人件費コストを抑えるために考案されたシステムだが,超がつく人手不足時代にあって店舗を運営するための唯一の手段として,近年頭打ちの感があったセルフスタンドの店舗数は,再び増加傾向に転ずるのではないかと予測している。さもなければ,もはやセルフに改造する余力や気力もなくなったGSが,次々と労務倒産や廃業に追い込まれることになるのではないか。日本のGS業界は,いま歴史的な危機に直面しているとの危機感を持つべきだと思う。

 そのうえで,まず採算の限度を超えた価格競争を即刻やめるべきだ。現在,ガソリンの仕入れ価格は暴落ともいうべき速度で下がっており,市況がその速度に付いてゆけないという,数年に一度あるかないかという局面を迎えている。いまこそ,理性を働かせて,適正価格で販売する努力をすべきではないか。「時給1400円」でも人が来ないという時代になったというのに,相変わらず数量至上主義に固執していると,早晩,いまいる人材も他の業種に引き抜かれてしまうことになるだろう。

 セルフスタンドであっても,カーケア施設を完備し,常時5~6人のスタッフを抱えなければポテンシャルを発揮できないような大型店舗は,やはり厳しい運営を余儀なくされるだろう。「給油のみセルフ」という“種目”に分類され,いずれ絶滅するだろうと言われてきた我々ローコストセルフは,原油価格が上がろうが下がろうが,求人倍率が高かろうが低かろうが,常に最少要員での店舗運営を継続することに徹し,おかげでなんとか生き延びてきた。人を雇う苦労,人を育てる苦労,人を辞めさせる苦労─ローコストセルフはこうした経営者の抱える苦労を軽減させる有効な手立てなのだ。

 しかし,時間給がどんどんつり上がる“売り手市場”にあぐらをかき,文句ばかりつぶやいて真面目に働こうとしない労働者は,やがてグローバリズムの厳しい洗礼を受けることになるだろう。気がついたときには,規制緩和によって流入してきた外国人や,技術革新によって生まれたロボットたちに労働需要を奪われ,人件費は高いうえ,権利ばかり主張する日本人が働く場所はほとんどなくなっているかもしれない。その時になって“一生懸命働きますから雇ってください”と言っても,もはや手遅れだろう。

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