セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.539『クリスマス』

オピニオン

2014-12-22

 私が時々行く小さな喫茶店は,有名ホテルのパティシエをしていた女性が切り盛りしており,店で出すケーキも自家製なのだが,この時期になるとクリスマスケーキの注文で忙しくなるという。そして,それに連動して,毎年イチゴの価格が急騰するのだという。本来,日本では5月から6月の初夏が収穫期のイチゴを,自然の摂理に反してビニールハウスで栽培するのだから,価格だけでなく環境負荷も高い。そこまでしてクリスマスにケーキを食べる意味が分からん。

 ひと昔前に比べればずいぶんと件数が減ったなとは思うが,GS業界も,この時期になると集客・販促キャンペーンが盛んになる。ハズレなしの抽選会や,洗車やオイル交換をした人に“素敵なプレゼント”を差し上げたりするなど,相変わらずのベタな企画ばかりだが,果たしていかほどの効果があるのだろうか。サンタの帽子をかぶったり,ヒゲを付けたりしたスタッフが給油するというGSもあるらしいが,そんなことをする意味がよく分からん。

 クリスマスは,おもちゃ業界やケーキ業界にとっては,一年の大半の売上げを稼ぎ出す大切な時期かもしれないが,GS業界にとってはほとんど何のご利益もない祝日だ。しかし,街のいたるところでイルミネーションがきらめき,様々なイベントが催され,スペシャルな雰囲気がこれでもかと煽られる中で,自分の店も“何か”をしないといけないんじゃないかという気持ちに駆り立てられてゆくのだろうか。

 12月24日から25日にかけては,GSに限らず,どこのお店も人手,とりわけ若いスタッフが確保できないという悩みもあるようだ。おりしも,例年よりも早く到来した寒波のおかげで,タイヤ交換や灯油配達にてんてこ舞いという時期に,何とか引き止めようと特別手当を支給すると言っても,「イブは彼(彼女)と過ごす約束があるんで」なんて一蹴されてしまって大弱りというGSも少なからずあるのでは。

 「まったくよりにもよって何でこんな時期にキリストは生まれたんだよ!」とぼやく社長さん,店長さんもおられるかもしれないが,実は12月25日はキリストの誕生日ではない。そもそも聖書にはイエスが生まれた日付がどこにも書かれていない。一方,イエスが生まれた夜,ベツレヘム近郊で羊飼いたちが「戸外に住んで」,夜間の羊の番をしていたとの記述が聖書にはあるのだが,その地域では,10月になると寒い雨季が始まり,寒さのピークとなる12月には,羊飼いたちが戸外で羊の番をするようなことは有り得ないと,多くの聖書学者たちは指摘している。

 クリスマスをキリストの誕生日であるとし,盛大に祝うようになったのは,キリストの死後300年ほどが経った後に,時のローマ教皇ユリウス一世が,帝国領土内の種々雑多な民族を“キリスト教化”するための一環として,古代ローマの農耕神を祭る異教の祝日をイエスの誕生日だと宣言したのが始まりと言われている。つまり,クリスマスは聖書的な根拠のないものであり,その始まりから,宗教の名を借りた一種の“集客イベント”に過ぎなかったというわけだ。まあ,そんな事は,12月25日にはクリスマスを祝い,12月31日には除夜の鐘を聞き,1月1日になれば初詣に出かけるという,宗教的には無節操とも言える多くの日本人にとってはどうでもいいことなのかもしれないが─。

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