セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.54『値上げ』

GS業界・セルフシステム

2005-04-04

 昨年の4月1日と言えば、消費税総額表示が施行され、全国のガソリンスタンドの看板価格も一斉に“値上がり”した日である。あれから1年経ったいまは、原油価格の高騰を受けての大幅値上げが進行中である。1年前の総額表示のときもそうだったが、価格を値上げするということに異常なほどナーバスになるのが、我が業界の悲しい“性さが”である。値上げすることに罪悪感を抱いているといっても良いぐらいだ。

 しかし、NHKの全国ニュースで、「あすから○円、値上がりします」とアナウンスしてもらえるような業界は、ガソリンスタンド業界ぐらいのものだ。それに元売りは情け容赦なく値上げを行ない回収するのだから、少なくとも仕入れ値上がり分はさっさと転嫁すれば良さそうなものなのだが、これがなかなか足並みがそろわない。「○□石油が値上げしたかどうかを確認してから」とか、「週明けから上げる」だの「いや、10日から」だのと、優柔不断このうえない。表示価格を上げたら上げたで、頼まれてもいないのに、実売価格はそこから3円から5円引きにする始末だから、もうかるはずがない。我が身を削ってまで薄利でガソリンを売り、元売りに尽くそうとする代理店の姿は健気けなげですらある。

 さて、その値上げであるが、大抵は夜間ひっそりと行なわれる。我がセルフスタンド日進東も、価格変更、とりわけ値上げは深夜に行なうことにしている。しかし、看板をかけ替えている最中にも客は来るため、POSの価格設定は、看板をかけ終え、その間に給油していた客がいなくなったのを見計らってからということになる。

 ところが、このあいだ、値上げをする時間になっても一台の車が給油レーンに停まったままでいた。運転席にはだれもいない。どうやら向かいのコンビニに行っているようだ。5分、10分、15分待っても帰ってこないところをみると、立ち読みでもしているらしい。仕方なく価格値上げを済ませると、帰ってきた客は「あれっ、さっきより4円も値上がりしている!」と目を白黒。さっさと給油しておけば良いものを…お気の毒様でした。

 私のスタンドでは、客と従業員とが接触する機会はほとんどないが、それでも、わざわざインターホンで呼び出して「どうして値上げしたんだ」と尋ねる客がいる。“アンタ、ニュース見てないのかね”と言いたいが、そういう客はそれを承知の上で、一言文句を言わないと気が済まないらしい。「隣町にはここより安いスタンドがあるぞ」などと言う客には、にっこり笑って、「そうですか。じゃあ、そちらで給油なさってください。もし、よろしければその店の領収証を持ってきていただければ、手前共も勉強させていただきます」と丁重に述べ、お引取りいただくようにしている。まあ、そういう客は大抵、「きょうは急ぐからここで入れてやる」とか何とか言って給油していくのだが…。

 いずれにせよ、値上がりしたからと言って牛タンを食べなくても日本人は生活できるが、自動車に乗らないわけにはいかないのだから、我々はもっと強気で値上げすれば良い。セルフスタンドでは、客の八つ当たりにさらされることも滅多にないから気が楽だ。ただし、ガソリンという商品は、どこまで行っても価格であることもまた事実であり、厳しい価格競争は避けられない。当面続くと予測される石油製品の暴騰状態の中で、きょうも採算販売に頭を悩ませる毎日である。

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