セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.542『ぼったくり』

社会・国際

2015-01-19

 昨年末,東京・新宿の居酒屋「風物語」が“ぼったくり居酒屋”だとしてインターネット上で炎上し,運営会社「海野屋」はホームページで謝罪,店舗は閉鎖された。この事件はあるツイッターユーザーが,同店舗を利用したところ,5人で利用したにも関わらず,6人分のお通し代を請求され,飲み放題の料金に加え,席料,週末料金,チャージ料の名目で合計4万円強を払わせられたというもの。その時のレシートもネットで公開され,「オレもやられた」「ワタシも!」と拡散したというわけ。

 ひと昔前なら泣き寝入りしていた人たちも,いまは即座に,世界中に通報することができるようになったので,今後もこの手の摘発がビシビシ行なわれることだろう。ガソリンスタンド業界も他人事と思っていてはいけない。オイル交換を頼んだら,あれもこれも交換・補充されてウン万円も取られたというクレームは,いまだにネット上で時々つぶやかれている。“このままだと車が壊れてしまいますよ”なんて脅し文句を真に受けて“じゃあお願いします”と応じてしまう客も客だが,あんまりえげつない商売をしていると,“ぼったくりガソスタ”だと槍玉に挙げられ,閉店に追い込まれるかもしれない。

 ある専門家は,円安による輸入物価の上昇と,深刻な人手不足によってデフレ依存型のビジネスモデルが行き詰まりつつある中で,“ぼったくり居酒屋”のような店,つまり,高付加価値を生み出すスキルを持たないままコストだけが上昇するため,商品やサービスをそれに見合わない高い値段で提供する店が,今後はたくさん出てくるだろうと分析している。そして,その多くは,現場に直接関与していない本部が商品企画や仕入れを全部仕切っている大手チェーン店が,消費者のニーズに対応できないままノルマ達成の圧力を受け続けることにより強引な手法に走り,“ぼったくり化”する恐れがあるとも指摘している。

 とはいえ,高付加価値化が世のトレンドかといえば,必ずしもそうは言い切れない。例えば,居酒屋チェーン「ワタミ」は,有名食品メーカーとのコラボや,国産素材へのこだわりを前面打ち出すなどして,高付加価値路線への転換を図ったが,一年も経たずに失敗と判断し,撤回してしまった。消費者は「ワタミ」に高付加価値を求めていなかったのだ。実際,“そこそこのものでいいから安い値段で”というニーズはいつの世も確実に存在する。そして,GSに求められるのはまさにそのことだと私は信じて疑わない。

 運んでくるタンクローリーに元売のブランド名が貼ってあろうがあるまいが,その中身はまったく同じ代物であり,商品そのものでの差別化ができないのだから,あとは付加的なサービスで差別化を図るか,価格を安くするほかないのが我々の業界だ。では,他店より十円高くても,客から支持されるようなサービスがあるのかと言えば,もう何十年も試行錯誤を続けてきた結果として,それは「風物語」,じゃなかった夢物語だと言わざるを得ない。

 折りしも,未曾有の原油安によって,GS業界はいまだデフレ台風の真っ只中に置かれている。割安感が広がり,わずかながらも客が戻りつつあるこの時期になすべきことは何か。毎度おなじみの(そして毎度失敗に終わる)“付加価値の創出”などではなく,コストの徹底した見直しにより,いずれ来る原油価格の上昇局面に備えることではないだろうか。「付加」どころか「負荷」となっているような設備やサービス,人員を速やかに削減すべく,ローコストセルフへの転換を図ること。それと同時に,仕入れ価格を精査し,仕入先から“ぼったくられて”いないかどうか,しっかり調べることが肝心だ。

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