セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.567『新国立競技場』

社会・国際

2015-07-20

 今月17日,総工費が2,520億円に膨れ上がった2020年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場について,安倍首相が「現在の計画を白紙に戻し,ゼロベースで見直すと決断した」と正式表明。今後新たにコンペをやり直し,秋までに新整備計画をまとめ,20年春の完成を目指すこととなった。

 鉄骨重量が東京タワーの5倍に相当する約2万㌧の2本の弓状の構造物(キールアーチ)で支えられる屋根を持つデザインを実現させるには,当初予算の1,300億円では到底無理ということになっての白紙撤回だが,このデザイン案を決定した2012年の国際コンペで,審査委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏は,記者会見で,「コストについて徹底的な議論はなかった」と釈明した。

 専門家だったら,“こりゃ無理だな”とその場で分からなかったのだろうか。いや,おそらく分かってはいただろうけれども,“とにかく東京大会実現のために,国際オリンピック委員会(IOC)の目を引くような斬新なデザインのものを採用しなければ”との思いのほうが勝った結果,コストを棚上げした決定がなされてしまったのではないだろうか。だから, 2013年9月に東京大会開催が決定した時,一部の関係者は,“やっべ~決まっちゃったよ~,マジであれ作らなきゃなんないのかよ~”と頭を抱えてしまったのではないだろうか。

 公共事業によるハコモノ建設がいかに税金の無駄遣いとなるか,すでに散々検証されてきたにもかかわらず,また同じ過ちを犯そうとする有様を見ていて,こりゃ日本もいずれギリシャみたいになってしまうかもしれないな,と思っていた矢先の「白紙撤回」。安保法案の問題で支持率が急降下している安倍政権が,国民の支持を取り戻そうとして打った一手との見方もあるが,とにかく今度こそ“安くて良いもの”を作らなければなるまい。

 ガソリンスタンドの建設についていえば,安全性を確保したうえで,あとはもう一にも二にも「ローコスト」,これに尽きる。ひとむかし前のGSは,凝った構造の屋根や,豪華なゲストルームなど,GSという施設の本来の目的とは直接関係のないところに無駄な金を費やしていた。あるGS経営者は,自社の系列元売のカラーと同じ色の熱帯魚を入れた大きな水槽をゲストルームに飾って悦に入っておられた。(なんという素晴らしいアイディアだ!ウチの店でもやろう!と感心する方もおられるかもしれないので論評は避けます)

 バブル崩壊後セルフの時代となり,ローコスト化は加速すると思いきや,店舗は大型化し,様々な付加施設が併設されてきた。それでも,ケタはずれの販売量でフル稼働させていればまだ良かったのだろうが,ガソリン需要がどんどん減少しているいまの時代には,1㍑あたりの運営コストがマージンを上回るようになってしまった店舗もあるに違いない。まあ,適正価格で売りさえすればいいだけの話ではあるが…。

 とはいえ,そこはやはり「面子」というものがある。「面子」とは中国語で顔のことだが, 古来中国には「顔を叩いて腫れさせて太ったふりをする」(打腫臉充胖子)という諺がある。竣工式で“地域ナンバーワンのお店を目指す”とぶち上げた以上,何が何でもたくさん売って,元売から表彰されたい!との意地と,照りつける夏の太陽が,理性的な判断を狂わせてしまい,「顔を叩く」かのごとき,安売りや販促活動へと多くのGS経営者を駆り立てているのだとすれば,痛ましいことである。

 それにしても,白紙となってしまったあのスタジアムの屋根,何だか見覚えのあるデザインだな~と思っていたら,高校生の息子が,自転車通学の際に被って行くヘルメットとそっくりだということに気がついた。(笑)

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