セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.571『盆踊り』

社会・国際

2015-08-17

 もう10年以上前のある夏の出来事だが,深夜に若い女の子ばかり3~4人が自転車や原付に乗って私の店に集まってきたかと思ったら,販売室のガラスの前でストリートダンスか何かの練習をはじめた。GSのフィールドは平坦なうえ,キャノピー灯で昼間のように明るい。おまけに私の店のセールスルームのガラスには反射式遮光フィルムが貼ってあるので,ダンスの練習にはもってこいの場所だったのだろう。ただ,深夜とはいえ車が出入りする場所なので,事故が起きてはいけないと思い,スタッフはしばらく彼女たちを躍らせたあと(笑)お引取り願ったのだった。私も翌日,監視カメラの映像でその様子を拝見させてもらったが,いやはや,若いということは素晴らしい…。

 こんな話を思い出したのは,今月の8,9日に,愛知県東海市大田町で「無音盆踊り」なるものが開催され,のべ400人もの人が参加したというニュースを見たからだ。盆踊りといえば夏の風物詩のひとつだが,近年は,会場周辺の住民から「うるさい」「なんとかしてくれ」といった苦情が寄せられるケースが増えているのだという。確かに,延々とドンドコピ~ヒャラとやられたんじゃかなわんと感じる人がいても仕方ないだろう。何せ,舞浜に住んでいながら,ディズニーランドの夜の花火の音がうるさいと文句を言う市民がいるぐらいだから…。

 それならばと,太田町はまちおこしの一環として,参加者がイヤホン付携帯ラジオを持参し,FM電波で同じ曲を聴きながら踊るという「無音盆踊り」を考案し, 6年前から毎年開催しているのだそうだ。主催者によると,最初は「風情がない」,「不気味」などの声が多く,参加者は40~50人程度だったが,回を重ねるごとに「踊りに没頭できる」などとして,輪が広がって行き,年々参加者が増えているという。また,FMチャネルを複数使用することで,年配者向けの曲と,若者や子供向けの曲とを個別同時に流して,異なる年齢層が一緒に踊りを楽しむことができるのもこのシステムの強みなんだとか。なるほどね~。

 確かに,傍から見れば,何百人もの人が無音の会場で踊っている姿は,カルト教団の儀式みたいに見えるかもしれないが,近年は,「阿波踊り」や「郡上踊り」のような日本を代表するフェスティバルさえ,やはり騒音問題などが理由で,練習する場所が限られてしまっていると聞くと,「踊る阿呆」も大変なご時勢だなと苦笑を浮かべてしまう。私は,自宅で怪しげなダンスを披露することはあっても,盆踊りなどには全く興味がないが,大田町の苦情を逆手にとっての発想力には大いに感心した。

 『ガソリンはどこまでいっても価格が勝負の商品,これからもずっと薄利のままだ。それでも年々販売量が伸び続けてゆくうちはいいが,それが下降局面になったときにはどうするか。そうだ,これからは売上げを伸ばすことより,コストを削ることに注力しよう。最大のコストは人件費だが,これを削るには…わかった!お客に給油させるようにすれば,人件費を削れるじゃないか!』─この逆転の発想が,今日のセルフスタンドを誕生させたと私は信じて疑わない。

 しかし,いくらセルフといえども,必要最低限のコストはかかる。それを賄いつつ経営を続けてゆくには,やはり一定程度の販売量とマージンを確保しなければならない。めいめいがどんな曲を聞きながら,どんな振り付けで踊るのかは自由であり,「系列踊り」もあれば「PBダンス」もあろう。中には熱病に打たれたように,全裸状態で踊る人もいるかもしれないが,やはり大切なことは,持続可能な踊り方をすることではないだろうか。

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