セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.596『悪魔に付け込まれるな!』

GS業界・セルフシステム

2016-02-16

 先週のコラムで,清原和博の覚醒剤逮捕を引き合いにして,どんなにプレッシャーやストレスに責めさいなまれたとしても決して犯罪に手を出してはいけない,と至極当たり前のことを書いたが,厳しい価格競争が続くGS業界でも,不正な利得を愛する気持ちを抑えきれず,犯罪に手を染めてしまう輩が跡を絶たない。

 『三重県四日市市で,ガソリンスタンド「エネオス阿倉川給油所」を経営していた地元の石油販売会社「アリマ石油」が,2014年2~11月の間に,地下タンクのガソリンに灯油を5㌫ほど混ぜた不正ガソリン約180キロ㍑を販売していたことがわかった。名古屋国税局は国税犯則取締法に基づき,同社と元社長に罰金相当額の計約400万円を科し,税務申告をしなかった同社に対し,無申告加算税を含む約1100万円を追徴課税した。アリマ石油の取引業者は新車がエンストしたりエンジンがかからなくなったりする車両故障が続出し,「壊れた車を弁償してほしい」と訴える業者もいた。元社長は業者を回り,「魔が差した」などと謝ったという』─2月14日付「朝日新聞」。

 ひと昔,いや,ふた昔前ぐらいまでは,粗悪ガソリンや脱税軽油は,PBスタンド(当時は“無印”と呼ばれていた)のお家芸のように言われていたが,最近は,系列スタンドのマークを隠れ蓑に悪事を働く経営者もいるようだ。元売の仕入価格ではやってゆけないというのなら,潔くPBになればよい。もっとも,PBになったところで経営が楽になるわけではないが,犯罪者になるよりはマシである。

 何だかんだ言っても,消費者がガソリンスタンドを選ぶ基準は価格である。価格競争が勃発すれば,否が応でも巻き込まれてしまう。そうでなくても街行く車は軽かHVばかり。販売量の漸減に歯止めがかからない中での安値圧力。苛立ちが募り不安が広がってゆく─。こうした状況にさらされた場合,経営者が高潔な道徳基準を持っていないと,容易に悪魔に付け込まれてしまう。四日市の小さなGSの不正も,フォルクスワーゲンや東芝の不正も,規模こそ違えど,皆,過度の競争社会の中で生み出された同種の“腐った果実”である。

 それにしても,今回の事件では,ガソリン出荷時に課税される1㌔当たり4万8,600円の揮発油税と5,200円の地方揮発油税を免れていたということで,180㌔で約968万円もの不正な利得を稼いでいたわけだが,結果的に,高い罰金を科せられたうえに,客からの信用も失って廃業に追い込まれたとは,何とも割に合わない。もっとも,仮にうまくごまかし続けて巨万の富を得たとしても,不正行為によって得たものであれば,いつか必ず“苦い実”を刈り取ることになるだろう。

 ところで,灯油を混ぜた粗悪ガソリンを給油するとどうなるかといえば,成分が不完全燃焼して噴射ノズル等に付着し,十分なガソリンが流れなくなるため,燃費の低下,触媒の損耗,エンジンの破損などの症状が出るとされている。ネット掲示板やツイッターなどでは,“○※□△のガソリンって粗悪ガソリンなの?”という問いかけに対して“俺も安いからあそこで入れてたけど燃費が悪くなった”とか“整備工場に持っていったら,「○※□△でガソリン入れてるでしょ」って言われた”などの書き込みがされている。

 「○※□△」は,GS業界ではだれもが知っている安売り量販店ばかり。根拠の無い中傷かもしれないが,あまりに安く売っていると“もしかしたら”と勘ぐりたくもなる。やれやれ,いやな時代になったものだ。馬鹿な安売り競争をいつまでも続けているからこういうことになってしまったんだと思う。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ