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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.603『シネマ雑記帳』

エンタメ・スポーツ

2016-04-05

 毎年1月に,日本で最も権威ある映画雑誌「キネマ旬報」が,過去一年に日本で劇場公開された映画の中からベストテンを選出する。選者は,主に映画評論家のセンセイたちで,毎年第1位は,邦・洋画いずれも一般の観客にはあまりウケない,小難しい作品が選ばれてきたのだが,今年はその“伝統”を覆し,SFアクション映画「マッドマックス・怒りのデスロード」が洋画部門の1位となった。2月に開催された米アカデミー賞でも,最多の6部門で受賞している。と言っても,作品賞や脚本賞,演技賞などの主要部門ではなく,美術や音響や編集といった技術系部門ばかりの受賞で,さもありなんと思われた。

 ストーリーは至って単純。核戦争後の地球で,人類は資源,とりわけ石油を武力で奪い合うことに明け暮れていた。主人公の元警官マックスは,女戦士フュリオサが運転する,ならず者たちから奪ったガソリン満載のタンククローリーに乗って,安住の地への逃避行を開始する。タンクローリー目掛けて襲い掛かるならず者軍団。果たしてマックスとフュリオサの運命や如何に…と,まあ,こんな感じ。見終わった後,知能指数が下がること間違い無しの映画である。なんでこんな映画が「キネ旬」1位になったのだろうか…。

 それはともかく,5年前の東日本大震災の際,道路網が寸断され,東北から関東に至る広い地域でガソリンの供給が滞りパニック状態が発生したが,当時,被災地に燃料を届けに行ったタンクローリーの運転手は,途中で暴徒に襲撃されはしないかとビクビクしながら運転していたという話を聴いたことがある。実際,乗務員二人体制で運んだ運送会社もあったらしい。幸い,実際に襲撃されるようなことはなかったようだが,リアル“マッドマックス”気分を味わったローリー運転手は,隠れたヒーローと呼べるかもしれない。

 実際,タンクローリーが運んでいる代物は,危険物であると同時に,時価数百万円もの商品である。もし強奪されたら卸元は大損害だ。昨年10月に公開された「アメリカンドリーマー・理想の代償」というアメリカ映画の主人公は,ニューヨークで灯油の宅配ビジネスを営む経営者。移民から一代で会社を興したやり手で,同業者から妬まれている。そんな彼の会社の宅配ローリーが次々に何者かによって襲撃され,強奪される。時は1981年で,GPSなど無い時代だから,ローリーは行方不明に。数日後に見つかった時には,中身の灯油は無くなっているという有様で,主人公は窮地に立たされる。

 主人公の妻はブルックリンのギャングの娘なので,義父に頼れば問題は解決できる。しかし,高潔な理念を抱く主人公は,裏社会との関係を拒み,たった一人で会社の危機に立ち向かってゆく。少々抑揚に掛けるストーリー展開ではあるが,サスペンス性も加わった見ごたえのあるドラマとなっている。特に,石油業界で働く人にとっては,タンクローリーが襲われる場面の緊張感はひとしおではないだろうか。

 普段,指定した日時にタンクローリーが商品を運んでくることを当たり前のように思っているが,危険物であり,高額商品でもある石油製品が無事に到着し,無事に荷降しが行なわれた時には,運転手にねぎらいの言葉を掛けなければならんなと感じる。

 紙面が余ったので,最後にお勧めの映画を一本だけ紹介しよう。2014年のアメリカ映画「君が生きた証」。エリート会社員の主人公は,大学で起きた銃乱射事件で息子を失う。ショックから自暴自棄となり,世捨て人のような生活を送っていた主人公は,ある日,息子が生前書きためていた自作曲のデモCDを聴き,自ら場末のバーで歌い始める。やがて何人かの若者たちとバンドを結成,次第に人気を博してゆくのだが…。あらすじを書くのはここまで。映画は中盤,唐突に観客を驚かせる。私もその場面で“えっ”と声を出してしまった。映画を観ていて,こんなに驚いたのはいつ以来か。名作ですよ。

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