セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.611『消費税先送り』

政治・経済

2016-06-07

 「消費税,先送りになって本当に良かったわ~」と,行きつけの寿司屋のおかみさんが安堵していた。安倍首相は,来年4月に消費税率を10㌫まで上げる公約を撤回し,2019年10月まで2年半延期することを決断した。

 首相はこれまで,「リーマンショックや大震災のような事態が起こらない限り予定通り引き上げる」と繰り返してきたが,先のG7サミットにおいて,各国首脳から,現下の世界経済情勢は“リーマンショック前夜”と似ているとの言質を取り付け,それを増税延期の理由付けにしたのだが,民進党などは,“アベノミクスの破綻だ”と糾弾している。与党内にも,増税を明言して総選挙を行なった以上,いま一度国民に信を問うべきではとの声があったものの,解散カードを温存したい官邸サイドに押し切られた形だ。

 まあ,税金は上がらないほうがありがたいに決まっている。新聞各紙が行なった世論調査でも,過半数の人が増税延期を「評価する」としている。将来の社会保障費をどのように賄ってゆくのか,という懸念があることは百も承知だが,我々一般庶民にとっては,あすの生活よりもきょうの糧を得ることの方が焦眉の急であって,増税延期はとりあえず歓迎だ。

 そもそも,景気が良くなったという実感がまったくない。ガソリンスタンド経営などという,およそ好景気とは無縁の商売をしているからだとばかり思っていたが,いろいろな業種の人に聞いてみても,「全然アカン。儲かっているのは大手企業だけ」という返事ばかり。特に一昨年4月に消費税が8㌫になってからは,一瞬緩んだかにも見えた人々の財布の紐は,それまで以上に硬く締められ,成長率はマイナスに転落。2015年度の成長率(速報値)は0.8%と辛うじてプラスに転じたが,個人消費も実質賃金もマイナスのままだ。

 「いっそのこと,5㌫に戻せば,個人も企業も消費が増え,日本経済は復活するのではないか」という意見もある。経済評論家の森永卓郎氏は,「一気に3㌫まで引き下げるべきだ」とまで主張している。このサプライズ政策が実現すれば,いままで抑えられてきた消費欲が一気に沸騰し,国内のお金の流れが急速に活発化し,結果的に税収増をももたらして財政再建も進む,というのだ。そんなにうまく行くかな~。

 とにかく,販売不振にあえぐGS業界にとっても,今回の増税延期は概ね歓迎されていることだろう。例えば,現在日進市のガソリン価格は115円ぐらいだが,消費税が10㌫になれば117円に上げなければならない。しかし,仮にあすから消費税が2㌫上がったとしても,すんなり2円値上がりするかといえば,これがそうは行かないんだな~。

 GS業界は,店頭価格を値上げすることに,病的とも言えるほどの恐怖感を抱いている。少なくとも日進市内のGSは。市況是正の値上げを行なっても,その日の午後にはもう値下げをしている始末。消費税率が上がれば,間違いなく利益を吐き出して(というほど利益はないが)“消費税還元セール”をやらかすだろう。GS業界は,ほとんどボランティアで徴税業務をするだけということになる。

 では,消費税率を5㌫に戻すことになったらどうなるか。もちろん,日進市のGSはすぐに112円,いや,小数点以下を切り捨てて111円,いやいや,切りのいい数字ということで(笑)110円にするだろう。胃袋の中身どころか,胃袋ごと吐き出すカエルのようだ。

 …というわけで,“安売り馬鹿”を刺激しないためにも,消費税はこのままそっとしておいてほしいというのが私の願いだ。

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