和田 信治
エンタメ・スポーツ
2016-08-16
巷では,「リオ,リオ」と喧しいことこのうえない。テレビ番組では,朝から晩まで,タレントやキャスター,ニュース解説者までもが「ニッポン,メダルラッシュです!」と絶叫している。ひねくれ者の私は,彼らが熱く叫べば叫ぶほど逆に感動が醒めてしまう。そもそも,柔道や水泳や体操に全然興味がないから,オリンピックだからといって観戦したいとも思わない。
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それにしても,相変わらずの金まみれ,薬漬けの“スポーツの祭典”。「国家の威信」や「国民の期待」がアスリートや各々の競技団体組織,後援者たちを飽くなき欲望へと誘うのだろうか。近代オリンピックの創始者,クーベルタン男爵の「勝つことではなく,参加することに意義がある」というモットーは,地に落ちたと言える。
まあ,そんなことはいまに始まったことでなし,声高に訴えたところでどうにもならない。それに“野球馬鹿”の私にとっては,五輪よりも,「イチロー三千本安打達成」と「中日D谷繁監督解任」のほうが,断然関心が高かった。
まずは,イチロー。8月7日,イチローは,彼自身が守っていればキャッチしたであろう,ライトフェンス直撃の三塁打でMLBに30人しかいないプレーヤーの一人となった。日本人が水泳でフェルプスに勝ち,陸上でボルトを破るよりも凄い,とてつもない偉業なのだということを多くの人に理解してもらいたい。
記録達成の日の記者会見で,「一般の人間は達成感が今後の目標に到達する上で邪魔になると思うんですけれども,イチロー選手はどう消化して,次の目標に進んでいかれるのでしょうか」という実に愚かな質問に対し,イチローはこう答えて我々を感動させた。「え?達成感って感じてしまうと前に進めないんですか?そこがそもそも僕には疑問ですけれども。達成感とか満足感というのは,僕は味わえば味わうほど,前に進めると思っているので。小さなことでも満足するっていうことは,すごく大事なことだと思うんですよね。だから僕はきょうのこの瞬間,とても満足ですし。それを味わうとまた,次へのやる気,モチベーションというのが生まれてくると,僕はこれまでの経験上,信じているので,これからもそうでありたいと思っています」─。
そうなのだ。一日一日,「小さな事でも満足」して,「前に進む」ことなのだ。イチローがメジャーリーガーとなった2000年に,セルフスタンド日進東もオープンした。足踏みしたり,後戻りしたりすることも多々あるが,とにかく「小さな達成感」を日々大切に,これからも少しでも前に進んでゆきたいものだ。イチローと共に。
さて,お次は「谷繁監督解任」。しかし,このニュースの主役は,実は谷繁氏ではなく,落合博満GM。球団事務所には「なぜGMは辞めないのか」との抗議電話が殺到しているとのこと。「落合,お前が監督やってみろ!」とも。もともと,ふてぶてしいキャラで敵の多かった御仁ゆえ,バッシングは相当のものらしい。でも,就任してから4位,5位,そして今年は最下位が決定的という成績の一番の責任者は,やはり監督だ。チーム編成やコーチ人事をめぐる落合GMと谷繁監督との確執などが取り沙汰されているが,当の落合氏は「俺が監督ならいまの戦力で優勝できる」とうそぶいているとか。ドラゴンズの黄金時代を築いた男が言うのだから,あながち強がりとは言えまい。
GSのマネジャーも,「もっと優秀なスタッフを揃えてくれれば」とか,「もっと集客イベントを打ってくれれば」などとグチる前に,与えられた戦力と予算でどうやったら成績を上げられるかを考えるほうが先ではないか。無論,本社から強力なバックアップがあればそれに越したことはないが,プレーイングマネジャーとしての自分の力量こそがその店の成績を決定付けるのだということを忘れてはならない。とりわけ,フルサービス店においては。
“そんな偉そうなことを言うんならお前やってみろ!”と言われるかもしれない。私にはそんな能力が無いから,こうしてセルフスタンドのオヤジをやっているのでございます。
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