セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.63『シンプルに行こう』

GS業界・セルフシステム

2005-06-13

 「これでいいんですよねぇ、これで…」─先日、私のスタンドを視察に来られたA石油の社長の口をついて出た感想の言葉である。プリペイドカード方式によるシンプルなシステム。操作が簡単なため、客から呼ばれることは滅多にない。限りなく無人化に近いシステムである。

 シンプルなシステムは、故障も少ない。稀に生じるトラブルも、予備の部品と交換するだけ。実に簡単なのだ。「メンテナンス・サポートはどうなってるの?年間保守契約料はいくらかかるの?」などとよく尋ねられるが、修理は基本的にメンテナンス・フリー、保守契約料はゼロである。

 プリカ方式のため、現金の出し入れは店内の券売機のみだから、売上管理の仕組みもシンプルである。最近プリペイダーに追加した現金読取機も、二千円までの小額給油に限定されているため、釣り銭の補充はほとんど必要ない。A社長から聞いた話では、関東にある某大型セルフ店には、十基のアイランドにフルスペックの精算機がずらりと並んでおり、精算時には軽トラック(!)に釣り銭を積んで、アイランドを巡回するのだそうだ。すべての精算機から売上金を回収し、釣り銭を補充し、勘定を合わせるまでに毎日三時間もかかるのだそうだ。ひぇ~。

 私のスタンドは、価格表示もシンプルそのもの。周囲のスタンドはどこも、表示金額から無条件に2円引き、会員カードでさらに2円引き、元売りクレジットならそこからまた1円引きと、二重三重の価格形態になっているのだが、うちは一物一価主義、ずばりそのまま。いま流行はやりのポイントカードも発券しない。あれ、後から結構重荷になってくるし、途中でやめるわけに行かないから大変なのだ。もちろん景品もなし。お愛想なしと言われればそれまでだが、その分、できるだけ安い価格で提供しようと心がけている。

 五年前のスタンド開業時から、“シンプル・イズ・ベスト”をモットーに、あらゆるものをシンプルな仕組みにするよう努力してきた。コストを最小限に抑え、ますます厳しさを増すガソリンスタンドの販売競争を何とか生き延びてゆくためのモデルを作りたいと試行錯誤を続けてきた。昨年3月から始めたこのコラムの中でも、シンプル、ローコストを何とかの一つ覚えのように訴えてきた。

 実際、セルフスタンド間の競争が激化し、従来のような「セルフ・イコール・量販」という考えは見直されつつある。そのせいか、最近になって、全国のガソリンスタンド経営者の方々から、「セルフに改造したいんだけれど、幾らぐらいでできるだろうか」といった問い合わせを受けるようになった。中には、遠路はるばる日進市まで見に来られる方もいて、ローコスト・セルフへの関心が徐々に高まりつつあると感じている。そして、私のスタンドへ来られる方々の多くが、冒頭のA社長のように、「これでいいんですよねぇ~」と、そのシンプルさに理解を示してくださるようになった。

 しかし、一方ではこんな話もある。セルフへの改造を計画しているあるスタンド経営者が、前経営者である自分の父親を説得しなければならないと言う。

 「それなら、今度はぜひお父さんと一緒にいらっしゃってくださいよ。百聞は一見に如かずで、うちのスタンドを見てもらえば、“ああ、これでいいのか”と安心していただけると思いますよ」

 「いや和田さん、それは逆ですよ。和田さんのスタンドをうちのオヤジが見たら、あまりのシンプルさにかえってカルチャーショックを受けて、ますます心配するかもしれないから、連れてゆけないんですよ」(爆笑)

 なるほどそういう見方もあったのかと、目からウロコが落ちる思いであった。

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