セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.632『セオリー』

エンタメ・スポーツ

2016-10-31

 今年の日本シリーズは日本ハムファイターズの4年ぶり3回目の日本一(前身の東映フライヤーズ時代を含む)で幕を閉じた。今年は広島カープが初戦でエース・大谷翔平をノックアウトし2連勝。第3戦は黒田博樹が“最後のマウンド”で6回途中まで1失点の快投,このままイッキに行くんじゃないかと思いきや,足を痛めて黒田が途中降板,最後は延長10回裏,打者・大谷のサヨナラヒットでファイターズが勝ち,その後3連勝で決着した。

 あの試合,8回裏,2-1で広島リードの場面で2死一・二塁から4番・中田翔が逆転タイムリーを放つのだが,レフト前のライナーを左翼手・松山竜平が懸命に突っ込んで捕球を試みたものの一歩及ばず打球を後逸,一塁走者も生還させることとなった。松山の“記録に付かない失策”といえるが,そもそも,カープ・緒方孝市監督は,なぜイニングの途中からでも俊足の赤松真人か野間峻祥を守備固めに入れなかったのか。

 さらに,10回裏に2死二塁となったあと,大谷にサヨナラヒットを浴びた場面で,カープの外野陣はなぜか中間守備シフトを敷いていた。1点取られたら終わりのケースでなぜ?と思っていたら,大谷に見透かされたように一・二塁間を破るヒットを打たれ,右翼手・鈴木誠也が捕球した時には,セカンドランナーは本塁に達していた。

 私は,この二つの采配ミスが広島に傾いていた流れを変えてしまったと思う。1点リードでの守備固めといい,サヨナラ機の前進守備といい,野球の専門家でなくても容易に理解できる「セオリー」である。なぜ緒方監督はセオリーどおりの野球をしなかったのか。しなかった,あるいは出来なかったどんな理由があったのだろうか。

 もちろん,セオリーどおりにやれば良いという訳ではない。セオリーに捕らわれない発想や行動が,しばしば“奇跡”を起こす。その最たる例が,栗山英樹と大谷翔平の師弟コンビと言える。二人が4年前に「二刀流宣言」をした時,落合博満氏以外の野球評論家は,ほぼ全員否定的あるいは懐疑的であった。大谷が7月3日の対ホークス戦で,「1番・投手」で出場し,いきなり先頭打者ホームランをかっ飛ばし,投げても8回10奪三振で無失点に抑えるという衝撃的な活躍をしたあとでも,張本 勲氏は,何が気に入らないのか,まだ「渇!」と吼えていたらしい。一方,二刀流を“プロ野球を冒涜している”とまで批難していた野村克也氏は,手のひら返したように賛辞を送っていた。

 万人が,さほど深く考えずに「常識」と信じていた事柄を,根拠と信念を持ってぶつかり,打ち破ってゆく。ナンセンス,クレージーと嘲られても─。これまで,人類の進歩はそのような勇気ある人たちによってもたらされてきた。さて,わが業界においてはどうか。客が自ら給油するいう方式は,それまでの“常識を覆す”というほどのことではなかったが,十年一日の業界においては,やはり画期的であったといえる。

 一方,価格だけを訴求するなら,必ず過当競争に巻き込まれ,採算が悪化するという,あらゆる業界に通じる「セオリー」は,いまだ無視されたままだ。ガソリンが年々売れなくなってきているにもかかわらず,まだ大逆転があるかもしれないと信じているのだろうか。「コストコ」のようなカテゴリーキラーが今後陸続と進出してきたら,もう勝ち目はない。自動車の省エネ化はますます進む。少子化の流れも止まらない。いますぐにでも,「量」ではなく「益」を追及するシフトを敷かないと後悔することになるだろう。

 7~8割方手中にした32年ぶりの栄冠を,広島カープは不可解な采配によって逃してしまった。しかし,日本シリーズに敗れたその日の深夜,マツダスタジアム内の室内練習場では,打撃練習をするカープの選手の姿があったという。まったく何という連中だ…。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ