セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.68『セルフ奇襲作戦』

GS業界・セルフシステム

2005-07-18

 少し前のことだが、石油情報センターがまとめた、平成十六年度の「給油所経営実態調査」なるものが発表された。それによるとセルフの平均的なガソリン販売量は266㍑/月と、フルスタンドの86㌔㍑/月に対して3倍強となることが判った。実際は、これよりさらに差があるに違いない。というのは、PB系セルフ量販店の多くは、この調査にまじめに答えていないと思われるからだ。いずれにせよ、ボリュームにおけるセルフの優位性は今後も変わらないだろう。

 ただし、セルフが儲かっているかと問われれば、ボリュームほどの優位性を得てはいないだろう。というのは、今回の調査で私が最も注目したのは、スタンドの従業員数に関するものなのだが、セルフはフルに比べて正社員数は少ないものの、アルバイトの人数がフルの1.8倍になるため、両者を合わせた従業員の合計人数はフルの6.2人に対してセルフは7.6人になるというのだ。「そんなバカな!」と言いたくなるような数字である。客が給油するセルフで、なぜ従業員数がフルより多いのか─。

 この疑問を解くかぎは、セルフのうち元売直営店が件数において圧倒的割合を占めており、なおかつその平均販売量が356㌔㍑/月であるという、もう一つの調査結果にあると思う。これまでも、このコラムで再三述べているように、元売直営のセルフは押し並べてコスト高の大規模店舗である上、採算よりも数量を追求するため、燃料油販売だけでは赤字となってしまい、油外商品の販売で補わざるを得ない。そのためには、販売スタッフが必要となり、フルスタンドよりも人件費がかかるという馬鹿げたセルフスタンドが出来上がってしまうのだ。

 そんな有様だからか、今回の調査で、セルフへの今後の取り組みについて意向を聞いた結果、全体では8割の経営者がセルフへの進出を考えていないと答えている。また、本紙二万号記念として企画されているスタンド経営者へのアンケートを見ても、「セルフはもう頭打ちだ」とか、「セルフは失敗に終わる」といった意見を述べておられる方が少なからずおられる。皆さん、セルフがあまりもうからない上、この先、セルフ間の競争が激化することを懸念してか、非常に消極的になっておられる。

 セルフ推進派の私としては、こうした状況を憂うべきところなのだろうが、実はニンマリとしている。なぜなら、元売直営店の多くが高コスト体質を改善できないまま、一段と激しくなる競争に突入しようとしている上に、いわゆる“一般のスタンド経営者”の皆さんは、現状にビビッてセルフに消極的になっておられる。つまり、先行組が壁に突き当たり、新規参入者は二の足を踏んでいるいまこそ、ローコストセルフで打って出る好機だと考えるのだ。

 人がやらないことをやるというのは、どんな市場においても成功するための大切な要素の一つである。歴史上の武将たちは、それまでだれも考え付かなかったような戦術で勝利を収めたではなかったか。例えば、源義経は平家の居城一ノ谷に進軍した際、鵯越の坂落としの奇襲で平家を撃破、さらに屋島に逃れた平家をこれまた嵐の中を出陣するという奇襲攻撃で敗走させた。崖や嵐といった、本来なら悪条件になるものを逆にチャンスと捉えた義経の戦術に倣って、セルフは頭打ちだの失敗だのと皆が言っている間に、あなたもセルフ奇襲作戦を敢行なさってはいかがだろうか。

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